『大恋愛‐』ムロツヨシが見せる“新しいイケメン像”

ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系/毎週金曜22時)で、俳優のムロツヨシが大当たりしている。“ラブストーリーの名手”大石静が脚本を手掛ける王道恋愛ドラマで、主演の戸田恵梨香を相手にまさかの(?)“二枚目”ぶりを発揮しているのだ。
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まさかの、とはいささか失礼な表現になってしまったが、2011年の『勇者ヨシヒコ』シリーズ辺りから注目を集め始めて以来、存在感のある脇役として親しまれてきた近年のムロツヨシには、けっして二枚目俳優のイメージはなかった。むしろ濃い目の個性や絶妙なタイミングで笑いを取ったり、面白おかしい空気を醸し出して主演を盛り上げるような役柄が多かった。それが『大恋愛‐』では、若年性アルツハイマー病にかかった女医の北澤尚(戸田)を支え続ける元小説家の間宮真司(ムロ)を演じる。10年にわたる純愛を描くドラマチックでロマンチック、そしてシリアスな物語だ。
これまでの恋愛ドラマであれば、いくら売れていない作家という役の設定とはいえ、結局はイケメン枠の俳優が真司役を演じたことだろう。例えば同ドラマでいえば、元婚約者で主治医のエリート医師・井原侑市役の松岡昌宏がキャスティングされたところではないか。たとえムロが出演するとしても、サンドウィッチマンの富澤たけしが演じている真司の先輩役辺りではなかっただろうか。
しかし、その二枚目枠にあえてムロを据えたことで『大恋愛‐』は大当たりした。過去、トレンディードラマでかっこいい美人女優として輝いていた浅野温子の相手役に、当時すでにオジサン風味が入っていた武田鉄矢をキャスティングして大ヒットした『101回目のプロポーズ』(1991年放送、フジテレビ系)などの例もあるが(そういえばムロは当時の武田と同年齢の42歳だ)、毎週放送されるたびにネット上でも好反響が見られる『大恋愛‐』を見ていると、純然たる美男美女の組み合わせよりも、どこかにギャップを持たせる方が視聴者の感情移入を誘いやすい面もあるのだろう。そういう意味では、センスの良い見事なキャスティングと言うしかない。
大泉洋や濱田岳、阿部サダヲなどなど、いわゆる“三枚目”的ポジションであっても実力的には主演を務めて何ら不思議ない俳優は多い。ムロはそんな中から今回、間宮真司という当たり役をつかんだ。絵に描いたような二枚目俳優では決して醸し出せない、独自の男前な雰囲気を体現している。