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過酷すぎる撮影に毒物混入騒ぎも! 『タイタニック』はいかに狂った映画だったか<後編>

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映画『タイタニック』(1997)より 沈没シーンも苦労の連続!
映画『タイタニック』(1997)より 沈没シーンも苦労の連続! 写真提供:AFLO

 製作費240億円を投じた大スペクタクル映画『タイタニック』。今夜放送される金曜ロードショーの後編では、いよいよ豪華客船が沈没する様子が描かれる。ジェームズ・キャメロン監督がこだわり抜いた本作は、沈没シーンも苦労の連続。さらに、公開前のマスコミによる猛バッシングから大ヒット達成まで、最後まで波乱万丈だった名作が残した、驚きのエピソードの数々をお届けしたい。

【写真】大パニックの船上 沈みゆくタイタニック号

●超過酷な撮影現場 ついに毒物混入騒動がぼっ発

 豪華客船の海難事故を描く作品だけあって、その撮影現場は超過酷。エキストラを含む大勢の人々が、巨大プールで何時間も水に浸かる撮影が続く中、防水メイクがプール内の化学物質によって洗い流されてしまい、常に修正しなければならなかった。さらにローズ役のケイト・ウィンスレットはダウンしてしまい、多くのキャストやクルーも風邪やインフルエンザ、低体温症を訴えた。そんな過酷極まる現場に加えて、撮影現場での厳しすぎるキャメロン監督に嫌気がさしたのか、クルーの誰かが食事に毒物を混入する騒ぎまで発生。キャメロン監督はすぐに吐き出して事なきを得たが、50人以上が病院に搬送される事態となった。

●クライマックスの沈没シーンの裏側(1)

 前半のラブストーリー展開から氷山との衝突を経て、『タイタニック』はパニック映画へと変貌。そんな本作最大の見どころでもあるクライマックスの沈没シーンには、150人のエキストラ、100人のスタントマンが動員され、さらにスタッフの知恵と努力、そして最新技術が詰め込まれた。

 いよいよ大パニックとなった船上から、人々が海へと落下していくさまが印象的だが、セットを浮かべた巨大タンクの深さは実は90センチ程度しかなく、船に面した数メートルの部分だけが深くなっていた。スタントマンたちは約20メートルの高さから、そこにめがけて果敢にダイブしたわけだ。落下した人は、すぐ次の人が上か降ってくるため、急いでその場から離れなければならない。実は海に浮かべた救命胴衣や瓦礫(がれき)は、浅くなっているところの目印になっていたという。優秀なスタントマンたちのチームワークによって、迫真のシーンに仕上がっているのだ。

●クライマックスの沈没シーンの裏側(2)

 安全には十分配慮した撮影現場だったが、沈む直前に船が90度に傾くシーンでは、ついにスタントマンが骨折するアクシデントが発生。そこでキャメロン監督は、あまりに危険なスタントはCG人間の“デジタルスタントマン”を使うことにした。仕組みとしては、別の場所で特殊なマーカーを身につけたスタントマンが落下する姿を撮影し、動きのデータをコンピューターに取り込む。そして、その動きを反映したデジタルスタントマンを作成し、編集段階で映像に合成するというものだ。撮影現場では、本番に動きの目安としてトイレットペーパーを落下させ、その映像に上書きする形でデジタルスタントマンが合成された。今や当たり前になったこの手法だが、当時はまだ非常に珍しく、おかげで生きている人間には到底できないスタントも可能になった。

●船が真っ二つに折れる圧巻のシーン

 船首からの浸水によって、船尾が持ち上がったタイタニック号は、その重さに船体が耐えられず、ついに真っ二つに折れてしまう。まさにキャメロン監督ならではの、圧巻のスペクタクルシーンなのだが、撮影以前、タイタニック号は折れずに沈んでいき、海中で2つに分かれたと考えられていた。キャメロン監督は、この“海上で船が二つに折れた”という新説を、劇中のCGシミュレーションとあわせて2回も披露。本作で大々的に提唱したというわけだ。

 その後レーダーなどのテクノロジーが進化した現在、船の中央部分が遠く離れたところで発見され、海底のタイタニック号は海底で3つに分かれていることがわかっている。キャメロン監督は映画で描いたことは誤りだったと認めているが、当時は中央部が存在していたこと自体が知られていなかった。タイタニック号が世界中の注目を集めたのは、まさにこの作品のおかげ。だからこそ、未だに新たな発見が報告されているのである。

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