『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』決して人形なんかじゃない “変化の描写”から読み取れる主人公の感情
アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が、『金曜ロードショー』(日本テレビ系/毎週金曜21時)で本日より2週連続放送。本日は、テレビシリーズを再構成した特別編集版、翌週の11月5日は2019年に劇場公開された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』が本編ノーカットで地上波初放送される。京都アニメーションを代表する本作、ファンを虜にする要素は多々あるが、ここでは主人公ヴァイオレットの感情や言動が読み取れるような“変化の描写”に着眼点を置き、作品の魅力に迫る。
【写真】『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』場面写真(32点)
本作は、戦うための道具として生きてきた少女ヴァイオレットが、戦場で彼女にとって大切な人物であるギルベルト少佐から言われた「愛している」を知るため、退役後に手紙の代筆業を営むC.H郵便社の“自動手記人形”として感情を学んでいく物語。今夜の『金曜ロードショー』では、テレビシリーズの序章にあたる1~3話と、人気の高い7・9・10話を中心に再構成した特別編集版が放送される。
■表情・言葉・行動に現れるヴァイオレットの変化
戦場で傷つき、病院のベッドで目を覚ました少女ヴァイオレットは、C.H郵便社のホッジンズ社長に引き取られ、手紙を代筆する“自動手記人形”の仕事に就く。物語の序盤は感情を出すことはほとんどなく、人の感情について理解も頓着もない人形のようにも見える。しかし、さまざまな人との出会いを経て、次第に笑顔や涙など人間らしさを見せるようになっていく。
こうしたヴァイオレットの変化は、表情・言葉・行動などに反映されていく。表情では、4話で同僚のアイリスに「あんたってほんと、人の気持ちが分かんないのね!」と怒鳴られ、ヴァイオレットがつらそうに顔をゆがめるシーンが印象的だ。それまでギルベルトに関わること以外では機械のように無表情だった彼女が見せた表情は、裏を返せば人の気持ちを理解したいという願望がこの時点で生まれていることが分かる。このあたりから、ヴァイオレットは自動手記人形としてはもちろん、言葉や行動でも劇的な変化を見せ始める。
続く5話は、泣きながら部屋を飛び出すシャルロッテ王女をじっと観察する描写があり、「恥じらっていらっしゃるのでしょうか?」と、泣いている理由を王女付きの女官アルベルタに確認している。6話では、天文台の大図書館で出会ったリオンに対して「怒っているのですか?」と問いかけるなど、他者に対して直接的に“今の感情”を尋ねている。7話では、戯曲家・オスカーの新作の物語を代筆しながら、「自分がこのオリーブという少女と同じように、喜んだり、悲しんだり、不安になったりするのはどうしてなのでしょうか」と、物語の主人公に感情移入するまでになっている。