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松本若菜、デビュー15年「30代前半まで暗黒期」 日本中から嫌われる覚悟でブレイク  

ドラマ

■暗黒期を経て迎えた、実りの時 美保子は「日本中から嫌われる覚悟だった」



 そんな松本にとって新たなターニングポイントとなった作品と言えそうなのが、『やんごとなき一族』だろう。ヒロインの佐都(土屋太鳳)をいじめ抜く美保子に扮(ふん)した松本だが、「タケノコタケノコニョッキッキと生えてきやがって!」と鬼の形相で佐都に詰め寄ったり、突然『サンサーラ』を歌い出したりと顔芸から替え歌まで披露した彼女のぶっ飛んだ演技が、“松本劇場”と呼ばれて大好評を博した。視聴者の反応に対してはうれしい驚きがあったという。

 脚本を読んだ当初は「美保子は佐都をなんとか引きずり下ろして、自分がヒエラルキーのトップにい続けようとする女性。日本中から嫌われるヒール役になるんだ、どんなに風当たりが強くなってもやりきるぞと覚悟していた」そうだが、「いざふたを開けてみたら、“美保子、好き”“面白い”と言っていただけて。すごくうれしかったです。美保子が真剣に怒れば怒るほど喜んでもらえる役になったのは、製作陣の方たちが、“美保子を単なるヒールではなく、一癖も二癖もある役にしたい”とおっしゃってくださったから」と喜びの声。


 全力で振り切ることができたのは、佐都役の土屋太鳳のおかげだと打ち明ける。「私が振り切ってやればやるほど、太鳳ちゃんが笑いをこらえているのが分かる。笑いそうになって“ごめんなさい”と謝りながら“よし!”と気合を入れているのを見ると、もう愛おしくて、愛おしくて。同時にこちらとしては“絶対に笑わせてやる”という思いも芽生えてしまったりと、2人の間でおかしな戦いがありました。太鳳ちゃんが本当にいい表情をされるので、どんどん演じるのが楽しくなっていきました」と目尻を下げながら、「まだ美保子が抜けないんですよ! いつの間にか、小指を立ててしまっていたり」と美保子に愛情をたっぷり傾ける。

 キャリア15年の道のりにおいては、「このまま続けていても無理かな。向いていないのかなと思う時もありました」と告白する。「30代前半くらいまでは、自分がこうありたいと思うものにたどり着けなかったり、オーディションになかなか受からなかったり。自分の中では、暗黒期と呼んでいます」とお茶目に笑いながら、「でも、心が折れそうだなという時に限って、いい作品に出会える。そうやって続けてこられました」としみじみ。


 38歳となった今、「早歩きが得意なタイプではないので、大股ではないけれど、一歩一歩、昨年より今年、今年よりも来年という思いで進んできました。そうやって少しずつエンジンを回してきたら、昨年あたりから、以前呼んでいただいた監督から、また違う作品でお声がけいただける、ということが続いて。『復讐の未亡人』のプロデューサーは、私が『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)に出演するタイミングで髪を切った時に、その写真を見て“これが密だ”と思ってくださったそうなんです。いろいろなご縁やタイミングが重なって、今の私がいます」と着実な歩みが、好転の連鎖を生んでいる。インタビューで対峙(たいじ)した彼女は、まぶしいほどの美しさで周囲をハッとさせつつ、和やかな笑顔で場を盛り上げるなど温かなオーラにあふれていた。「もっと見たい」と思わせてくれる女優、松本若菜の活躍がますます楽しみだ。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
 
 ドラマ『復讐の未亡人』は、テレビ東京にて7月7日より毎週木曜26時35分放送。パラビで全話配信中。

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