Kis‐My‐Ft2・藤ヶ谷太輔、笑福亭鶴瓶から多くの学び 中居正広の“飴と鞭”も告白
Kis‐My‐Ft2としての活動はもちろん、ドラマ、映画、舞台、さらにバラエティー番組やトーク番組でのMCとジャンルを問わない活躍を見せる藤ヶ谷太輔。2023年は、自身のパブリックイメージとは真逆とも言える“クズ男”役で幕を開ける。「楽しい思い出は1個もない」と笑いながら語る藤ヶ谷に、役者として新境地を開いた今の気持ちを聞いた。
【写真】クズ男・裕一も藤ヶ谷が演じるとどこか憎めない魅力が
◆新境地“クズ男”裕一は「一周回ってかっこいいんじゃないか」
藤ヶ谷が主演を務める『そして僕は途方に暮れる』は、2018年にシアターコクーンで上演されたオリジナルの舞台を、脚本・監督・三浦大輔×主演・藤ヶ谷が再タッグを組み映画化。主人公のフリーター・菅原裕一がほんのささいなことからあらゆる人間関係を断ち切っていく、人生を懸けた逃避劇を描く。
舞台で演じきった役を、今度は映像で演じるというオファーに「素直にうれしかった」と振り返る藤ヶ谷。裕一は、面倒だったり不都合だったりする状況に直面すると、それに向き合うことなく、とりあえず逃げ出してしまうというキャラクターだ。「気付いていないだけかもしれないですけど、自分にはそういう要素がないので、(自分に)ないものができる面白さがあり、“もう1回できるんだ、うれしい”って一瞬思いました。けど、よくよく考えたら、あのつらい現場をもう1回やるんだって一気に落とされる感じもありました」と笑う。
映画『そして僕は途方に暮れる』場面写真 (C)2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会
というのも、2018年の舞台上演時は「日々精一杯トライして、ダメって言われたら書いてまたやってっていうトライ&エラーの繰り返し」だったそうで、「稽古2ヵ月弱くらいやって4キロくらい落ちました。不思議と食欲もないし、勝手に痩せていくんですよ。三浦式ダイエットが一番効果あるんじゃないかって(笑)」と告白。「いっぱいいっぱいだったし、初日から千秋楽まで毎朝ダメ出しがあって。三浦さんも愛情を注いでくださったし、ずっとそばで見ててくださった」と当時を思い返しながら、「本当に嫌なキャラクターだったら、“あれ映像でやるのか…”と思うのかもしれないけど、まったくその気持ちがなかった。あのクズだけど愛おしいキャラクターをできるんだって思ったので、そうさせる裕一の力ってすごいなって」と、3年を経ての裕一役に愛情を持って臨んだ。
映画『そして僕は途方に暮れる』場面写真 (C)2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会
裕一という“クズ男”の魅力は「クズで逃げていくんですけど、でも不思議と彼には彼女もいるし、親友もいるし、友達もいるんですよ。クズすぎると、それこそ愛くるしいキャラクターになるというか」と分析する藤ヶ谷。「ダメ男が好きな方とかいるじゃないですか。クズすぎると、“私がどうにかしてあげなきゃ”“私が守ってあげなきゃ、この子はダメになっちゃう”、そういう気持ちにさせる。(裕一は)見た目が汚いとか、言葉が悪いとか乱暴とかそういうところがまったくなくて、一生懸命生きているフリーターの愛くるしさがある」と話す。さらに「一周回ってかっこいいんじゃないか」と思ったとも。
「彼も逃げたくて逃げてるわけじゃなく、(心の中で)何かひっかかるポイントになってしまうと衝動的に逃げて、先を考えてないんですよね。自分とかのタイプだと、逃げたいとなってもその先、行く先あるかな? 誰に連絡付くかな?とか、戻ってくるときにしんどそうだなとかいろいろ考えますけど、(裕一は)出ちゃう。愛くるしさとかっこよさを両方持っている人なんだなって改めて思いました」。
逃避行を続ける裕一のなりふりかまわないビジュアルや、ここまで見せて大丈夫なのか?と心配になるくらいのボロボロな表情など、藤ヶ谷の新たな一面に驚いた。そう伝えると「全部監督にお任せしました。気持ちもビジュアルも話し合って、髭も剃らずに、髪も伸ばして、メイクもせずに。げっそりしていくし、くまも出てくるんですけど、最近ワイルドな人が減っているので、逆を行くのがすごく面白かったです」と本人は意に介さず。
映画『そして僕は途方に暮れる』メイキング写真 (C)2022映画『そして僕は途方に暮れる』製作委員会
「振り返った時の顔の寄りとか、逃げるのもすごい距離を走るなど、舞台と違って作品がより立体化していくのが面白かった」といい、「(観客は)クズだなって思って鼻で笑うと思うんですけど、見ていくうちに私もこういうところあるなとか、こういうことしたことあるなとか出てくると思う」と話す。「緩急というか、急に自分に刺さるところがあると思うので、そういうところも三浦さんの作品の深さであり見どころだと思います」とアピールする。
「苫小牧のフェリーターミナルで買って食べた『じゃがポックル』に救われました」と笑う心身ともにハードな撮影を経て、役者としてさらに輝きを増した藤ヶ谷の姿をぜひスクリーンで確認してほしい。