杏、キーマン“紫夏”役で『キングダム』出演 次世代へ受け継ぎたいものは「利益の出ないもの」
――「受けた恩恵は全て次のものへ」という紫夏のセリフがあります。杏さんが次世代へ受け継ぐ歴史、社会とのつながりという視点をこの言葉から学んだと話されていたのが印象的でした。こうした広い視野の持ち方は、フランスで暮らすようになった影響もありますか。
杏:それよりも、もともと歴史が好きだからかもしれません。あとは、倉本聰さんの「富良野自然塾」に伺ったとき、「現在は未来からの借り物」という話を聞いて、今あるものは、大事に残さなきゃいけないなと思ったこともあります。色々な点がつながった線の中の1つの点なんだという意識は常に持っていたいです。
――今はフランスと日本の二拠点生活だそうですが、フランスに住んでみて気づいたことはありますか。
杏:まだ1年経っていないので、あまり声高には言いづらいですが、色んな国の色んな考え方の人がいるということは感じます。日本でも、地方に行くと、感覚の違いなどに気づくことは往々にしてありましたが、フランスは大陸で色んな国とつながっているので、余計にそういう違いに気づきやすいというか。そもそも今のフランスの国の形になる前は、色んな小国が集まっていたわけですし、例えばローマ帝国の頃から培われてきたものが、今の価値観やそれぞれの民族に対する思いみたいな部分に反映されていて、フランスに生まれ育った人はそうしたものを最初から持っているだろうことなどを感じます。
――では、杏さんが「受けた恩恵は全て次のものへ」として、次へ渡していきたいものは何でしょうか。
杏:利益の出ないものですね。例えば、迷っている人や困っている人がいたら、声をかける。本当にささやかなことですけど、できるだけ普段からそうしようと思っています。大きな話ではなく、そうした日常生活の中のごくミクロな話として、「自分にできそうなことだったらやる」という感覚を、周りにも、次の世代にも渡していきたいですね。
(取材・文:田幸和歌子 写真:松林満美)
映画『キングダム 運命の炎』は公開中。
※えい政の「えい」は「上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくり」が正式表記