『ONE DAY』中谷美紀、岐路に立つキャスター役は「自分自身の年齢と重ね合わせても、非常に興味深いテーマ」
二宮和也、中谷美紀、大沢たかおがトリプル主演を務める新月9ドラマ『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系/毎週月曜21時)。クリスマスの1日を1クールかけて描く本作で、殺人事件の真相を追う報道キャスター・倉内桔梗役を演じる中谷美紀にインタビュー。
【写真】現場主義のキャスター役を演じる中谷美紀
本作は、人々が思い思いに過ごすクリスマスイブという“たった1日”の出来事を、1クールで描く謎と愛と奇跡の物語。主人公は別々の人生を歩んできた、全く関わりを持たない3人の男女。それぞれの物語が同時並行で進行していくが、次第に運命の交錯へと導かれていく。
中谷が出演する通称「地方テレビ局編」には、福本莉子、小手伸也、加藤諒、大水洋介、丸山智己、梶原善ら個性派キャストが顔をそろえ、ある殺人事件を追う放送局内で起こる人間ドラマが描かれる。
◆キャスター役のためにフジ現役アナウンサーから講義
――クリスマスの1日を3ヵ月かけて描くという異色のドラマとなりますが、オファーをお聞きになった時の印象はいかがでしたか?
中谷:1日のお話と伺いまして、衣装替えがないから楽かもしれないとちょっと姑息なことを考えました(笑)。髪形を変えたり、爪の色を塗り替えたりといったことを面倒くさいと思うタイプなので、(今回は)着たきりすずめでいいなと心躍りました。
とはいえ、1日を1クールかけて描いていくというのは、なかなか簡単なことではないので、製作陣はとても大変なのではないかなと感じました。現在も本づくりにかなり腐心していらっしゃる感じをお見受けいたします。
――実際に台本をお読みになっての感想はいかがでしょう。
中谷:瞬く間に物語が進んで行くので、とても興味深くて、自分が出演しているうんぬんではなく、目が離せなくなる作品だなと思いました。ましてや主軸の物語が3つあるので、それがどのように今後交錯していくのか楽しみでもありますし、自分が出演していないシーンも興味深く台本を読んでいて、二宮さんや大沢さんが演じられたらどうなるのかなって想像して楽しんでいます。
――演じられる桔梗という女性はどんなキャラクターと感じられましたか?
中谷:順風満帆なキャスターではなく、もともと記者なので、表に出ることを目的としていたわけでもなく、ジャーナリズムに基づいて地元密着型のニュース番組を立ち上げた女性です。でも、株主の会社から出向してきた社長さんに左遷といいますか、「報道はいらない、料理番組に異動せよ」とお告げをいただきまして、窮地に立たされている。多くの女性が共感してくださるのではないかなと感じました。仕事だけではなく、年齢によって女性が居場所を失うという、多くの方に共感していただけるテーマも含んでいると思いますし、男女を問わず上層部からの命令によって、情熱を持って携わっていた職を失うといいますか、自分自身の年齢と重ね合わせても、非常に興味深いテーマだと思いました。
――キャスター役を演じるうえで意識されていることはありますか?
中谷:今回、西山喜久恵さん、佐々木恭子さん、梅津弥英子さんというたいへん贅沢なフジテレビの3名のキャスターの方にご指導いただいております。西山さんからは、「キャスターというのは演技派でなくてはならない」と伺いました。たとえばお子様が虐待にあわれたような悲しいニュースを伝えた直後に、公園で藤の花が開花しましたというようなニュースを伝えなければならない。その切り替えも実に皆さん演技派であると。ニュースをただ読んでいるだけではなく、媒介に徹しながらも、おのおのご自身の意志もおありでしょうし、その匙加減に関しては、とてもきめ細やかにバランス感覚というものを意識されているようでした。
佐々木さんからは、平田オリザさんのご講義で「アナウンサーというのはすべての文字を語尾にいたるまではっきりと発するとても奇妙な生き物だ」と言われたお話を、梅津さんからはアナウンサーには感情を持って伝えるタイプと淡々と事実だけを伝えるタイプの2タイプいるというお話を伺いました。どの方のお話もとても勉強になり、桔梗というキャスターをどのように演じていくか、鈴木雅之監督と相談しながら試行錯誤してみたいと思っています。
――桔梗というキャラクターについてどんな人物にしたいと思われますか?
中谷:監督からは活動的な役柄にしたいと言われています。バタバタ常に動き回って、じっとしていられないんでしょうね。発砲殺人事件が起きたとの一報が入ると、我先にクリスマスの渋滞をかいくぐって、自転車で現場に駆けつけるようなタイプです。
自分自身が生み出し、自らの子どものように、プライベートをかなぐり捨てて大事に育ててきた番組なので、プライドを持って、地元横浜の皆さんに伝えるということを何よりも大切にしているキャラクターだと思います。もしかしたらご覧になる方によっては「そんなに熱くなっちゃって」と鬱陶しいと思われるかもしれないですが、ドラマの主人公としてはとても応援したくなるキャラクターだと思います。皆さん誰もが周囲の目を気にしたり、本音を言えないという人が多いなか、せめてドラマの主人公くらいは本音を口にしてくれたら、皆さまのカタルシスになって、スカっとちょっとすっきりしていただけるのではないかなと。