宮藤官九郎「いつか“本当の歌舞伎作家”に」 多くのヒット作生み出す男の夢と理想とは
伝統ある歌舞伎界も、“現代”を取り入れ変化していく姿が見受けられる。それも長い年月を費やして続けていけば伝統になる。
「いま古典と呼ばれているものも、最初は新作と呼ばれていたんですからね。今回の『唐茄子屋 不思議国之若旦那』も、勘太郎くんが大きくなったとき、勘九郎さんがやっていた役をやるかもしれない。続けていけば、これも古典になる可能性があるかもしれませんからね」。
とは言いつつ「でもお客さんは意外と古典が好きなんですよね」と笑う宮藤。だからこそ、シネマ歌舞伎というスタイルは大きな役割を果たす。
「例えば映画館にシネマ歌舞伎のチラシが置いてあったら『なんだろう』と目に留まるかもしれない。全国の映画館で観られるので、なかなか生の歌舞伎を観に行けない人も気軽に歌舞伎の世界に触れることができると思うんです。そこで面白いなと思ってもらえたら嬉しいですね」。
受け継がれていく文化。それをいま創作しているという醍醐味(だいごみ)。宮藤は「いまコンプライアンスがより一層厳しくなっているからこそ、歌舞伎で描かれているものを観て、若い人は『これ大丈夫なの?』と思うかもしれませんよね。でもその世相の違いも、後世に残すことで1つの色になっていく」と風俗をビビットに描くモノ作りの面白さを語っていた。
(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)
シネマ歌舞伎『唐茄子屋 不思議国之若旦那』は、1月5日公開。