福士蒼汰&松本まりか、勢い増す現在は「すごい成長期」 “分からない”難役への挑戦語る
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――圭介と佳代に近づけたと思う瞬間もあれば、突き放されるような感覚になるときもありました。社会通念を超えた、すべてをさらけ出す覚悟のいる難役だったかと思います。オファーを受けるのに、躊躇(ちゅうちょ)はありませんでしたか?
福士:僕自身、実は不安な気持ちはあまりなかったんです。お話をいただいたときは29歳だったのですが、それまでエンタメ作品へ出演させていただくことが多かったので、本作のようなリアルな世界を描いた作品はずっと挑戦してみたかった。今までとは違った作品、役柄にとても前向きに挑戦することができました。
福士蒼汰
松本:私は、映画化へのすごい覚悟を持った大森監督に、重要な役を「まりかでいきたい」と言っていただけたことが大きな決め手でした。「やることになるだろうな。やりたい。やるべきだ」と。でも実際に本を読んでみて、拒絶反応がすごかったんです。分からなかったんですよ。この作品が、役が。圭介との関係も理解できなかった。やりたいけれども、できる自信がなかった。逡巡しました。でも本能的に自分が行きたい場所であることと、分からないものに立ち向かって、その先の景色が見たいと思って「やります」と言っていました。
――挑戦してみていかがでしたか?
福士:僕も脚本を読んだとき、抽象画のような印象を受けました。この映画は、池田記者(福地桃子)が追っていく薬害事件や731部隊の話(※)と、圭介と佳代の歪んだ関係性が、実は重なっていて、抽象画と具象画の2つが並べられているようだと感じました。圭介と佳代は抽象的な関係性なので、それをどう表現するかがとても難しかったです。でも演じるにあたっては、伊佐美(浅野忠信演じる、薬害事件のトラウマを引きずる先輩刑事)との関係性や、佳代との関係性だけに集中してお芝居をしました。
※週刊誌記者の池田が不審死事件を探るうち、物語は、過去の薬害事件や、戦時中の旧日本軍731部隊といった歴史の暗部にまで広がっていく。
松本まりか
松本:佳代という役を理解するのは難しかったです。分からないことに立ち向かうこと、挑戦することは恐怖です。私にとってもこの映画は恐怖でしたが、立ち向かうことで得られる深度の深さのようなものがありました。目まぐるしい日々の中で何が美しいかとかも分からなくなっていました。でもこの映画に向かうには、人間の本質、自分の本質に対峙しなくちゃいけない。役者としても、極限状態でした。
――限界に。
松本:でもそのとき、今まで見た景色の中で一番美しい景色を見たんです。ラストの朝焼けのシーン。スタッフさんたちが逆光で朝日を撮っているとき、その光景がすごく美しくて、「ここにいたい」と明確に思えました。自分の限界に挑戦しないと見られない景色だったと思います。この映画も、人間のものすごくインモラルな、閉じているところを炙り出すような作品で、そこを観なくちゃいけない。社会性という仮面に隠された本質が見えてしまう映画だと思います。頭で理解できないし、理屈じゃない。体で感じる映画だと思います。