平野綾、胸にあふれる『ベルばら』愛 現地を訪れマリー・アントワネットの孤独を体感
本作の大きな特徴は、『進撃の巨人』『機動戦士ガンダムUC』『キングダム』などで知られる澤野弘之が手がけた15曲もの壮大な挿入歌が、キャラクターの人生をドラマチックに彩っていることだ。オスカル役の沢城みゆき、アンドレ役の豊永利行、フェルゼン役の加藤和樹。そしてアントワネット役の平野ももちろん、劇中で麗しい歌声を披露している。
平野は19歳で出演したアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』のハルヒ役で一躍ブレイクを果たし、その後はミュージカルの世界にも進出。2014年には『レディ・ベス』で帝国劇場の主役を務めるなど、着実に歩みを進めてきた。歌唱もふんだんに盛り込まれた今回の『ベルサイユのばら』は、「声優を経て、舞台を経験してきた今だからこそ、たどり着けたような作品であり、役柄です。すべての経験が糧となって、パフォーマンスに繋がっているんだと思いました」と声優だけでなく、ミュージカル俳優としての経験を注げる作品になったと感慨深げ。「『こういった曲調のものが来るのか!』と、意外性のある楽曲をいただきました。そういったことにも今ならばいろいろなアプローチを考えたり、アイデアを提案したりと、対応できる術が備わっている状態」と実りの時期に、すばらしい作品に身を投じることができた様子だ。
作品や役柄について熱心に語るなど、仕事に並々ならぬ愛と情熱を傾ける姿がなんとも魅力的だ。パワフルなオーラが輝く平野だが、自分自身の道を切り開いていく上で大切にしているモットーは「初志貫徹。一度決めたら、揺るがない」と笑顔。「子役の頃から考えると、芸能活動を始めて27年ぐらいになると思います。その中で『もうやめよう』『もう続けられない』と思ったことはたくさんあって。一番悩みが深かったのは、20代の中盤に差し掛かるくらいだと思います。声優として活動しつつ、舞台の世界へと飛び込んで、もしかしたらすべてのお仕事を失うかもしれない、どうしようという不安もたくさんありました」と告白する。
くじけそうになりながらも、志を貫こうとする原動力とはどのようなものなのだろうか。「頑固な性格もあると思います」とふわりと微笑んだ平野。「私はもともとミュージカルや舞台の世界に憧れを抱き、10歳で児童劇団に入りました。当時、両親からは『今からこの仕事を選ぶなら、一生の仕事にしなさい』と言われて。その約束を大切にしながらずっと続けてきたんですが、『本当に無理かもしれない』と悩みが深かった時期に、両親は『約束はしたけれど、破ってもいいんだよ。また新しい約束をすればいいんだよ』と言ってくれました。とてもありがたかったけれど、『悔しい』と思って(笑)。一番応援してくれる両親に、『諦めました』と言いたくなかったんですね。そこで力を出してよかったなと、今でも思います。エンタテインメントが大好きで、皆さんにそれを届けられる喜びはとても大きなものです。そしてなにより私自身がいつもエンタメに助けられてきたので、今度はお返ししていく番」とまっすぐな瞳を見せていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
劇場アニメ『ベルサイユのばら』は、1月31日より全国公開。