三山凌輝&久保史緒里、アーティストであり俳優という共通点 グループに寄せる想いに共鳴
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久保史緒里
――お二人とも話題作への出演を重ねています。俳優業の醍醐味について、どのように感じていますか。
久保:何回、なぜ私は俳優業をやっているのかなと考えてみても、やっぱり「好きだから」というところにいつも戻ってきます。すごく難しくて、いつも悩むし、毎回落ち込みますが、やっぱり好きなんですね。内田監督とご一緒させていただくのは今回で3度目となりますが、そういったご縁の糸がつながっていくこともうれしいです。それは自分が続けてきたからこそ、叶えられたこと。向いているかはわからないけれど、続けることに意味があると信じてこれからも頑張っていきたいです。また今回、とてもうれしかったことがあって。初めて本読みをした日、自分が持っていったものと内田監督が思っていたものが違ったようで、結構打ちのめされてしまったんです(苦笑)。「現場に入るのが怖い」という気持ちでいたんですが、現場では内田監督とたくさんお話をすることができて、いろいろな言葉をいただきながら「この仕事を続けていきたい」と強く思うことができました。
三山:僕もまず「好きだ」という気持ちや好奇心がないと続けていけないなと思っています。今はいろいろな活動をさせていただいていますが、撮影現場に身を置いていて「ステキだな」「面白いな」と感じるのは、その一瞬にしかない温度感や空気感がカメラに収められることです。そこには俳優同士の探り合いやお芝居の交換があって、みんなが自分と勝負をしている瞬間でもあり、それがぶつかり合っている場所だとも言えます。誰もが「緊張しています」「頑張っています」など言葉にすることはありませんが、そういった想いすべてを芝居に変えていこうとしています。人と人がなにかを紡いでいこうとする時間がとても好きですし、また作品や役柄について考える時間も好き。シンプルに僕は、“考える”という行為自体が好きなのかもしれません。
(左から)三山凌輝、久保史緒里
――自分の正直な気持ちをなかなか表現することができない良城と月菜。出口が見つからずもがいている状態にある二人ですが、三山さんと久保さんにとって一歩踏み出せずにもがいた経験や、その時に突破口となったものがあれば教えてください。
三山:僕は人生において、常にもがいています(苦笑)。物事を変えていこうと思うと、必ずそこには大きなチャレンジがあります。表現者として自分を曝け出していくのは危険さも伴うことだとも感じますが、そういった苦しみ、もがきを突破したとしたら必ず新しいフェーズに行けるはず。そして突破していくためには、やっぱり思考を深めていくしかないのかなと。自身の経験や思考、感性を融合させた時に起きる化学反応がパフォーマンスとして表出されていくと思うので、グループ活動であれ、個人としての活動であれ、どこまで考えて、何を大事にして生きていくのかということがアーティシズムにつながっていくことになる。年齢を重ねるごとに、人間力を磨いていくことが何よりも大切なんだと実感しています。
久保:私は言葉にすることがとても苦手で、「どう思う?」と聞かれると、それをうまく言葉にできず、自分が何を思っているのかさえわからなくなってしまうことがあって。もっと俳優としても成長しなければと思いつつ、それが自分自身の課題のひとつだと感じています。そんな中、本作のラストシーンの撮影でとても印象深い出来事がありました。実はラストシーンは、台本とは全然違うものになったんです。内田監督が、私と三山さんに「どう思う?」と聞いてくださって、お互いに意見を出し合いながらそのシーンに挑むことができました。監督が大事なシーンを私たちに委ねてくださったこともうれしかったですし、言葉にして、話し合いながら作品をつくっていけた感覚があり、とても成長させてもらった瞬間でもありました。
(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
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