研ナオコ、「中途半端にやるのだったら、やらない方がいい」 全力投球の芸能生活55年、転機となった出会いとは?
本作で演じた紀江のセリフで、「仕事は生きる糧」という一言がある。研は「仕事って、人生の真ん中にあるものだと思う」と共感を寄せ、「私は体が動かなくなるまで、しゃべれなくなるまで仕事をしていたい」ときっぱり。
現在71歳となったが、「この先、まだまだやりたいことがいっぱいあります。これまで一度も『満足した』『納得がいった』と思ったことはありません。歌なんて特に、今でも下手くそだと思いますから。もっとうまくなれるはず、もっとうまくなりたいと思う。その年齢に応じて、表現って変わってくるものですよね。また違う表現方法が生まれてくる。若い時はバーッと勢いで歌っていたものが、年齢を重ねていろいろな経験をしたことで、ドンと腹を据えて歌うことだってできる。お芝居もそういうものだと思います」といつも前を向いて新たな表現に挑んでいる。
そして55年の芸能生活の中でも、「歌手になりたいと思って、16歳で上京をしました。デビュー当時はどん底。スナックやキャバレーをまわったり、移動時間も長くて毎日大変でした。売れるためならなんでもやるという思いで、乗り越えてきました。もうあとは上がるだけ。でも頂点には行きたくないですね。のぼっていく過程が好きなんです」という研。
転機となる出会いについて「田邊昭知さんと出会ったこと」だと所属事務所の会長の名前を挙げ、「そこから道が開けていきました。田邊さんに開いてもらったというのかな。口は悪いんですが、メイクや衣装、ヘアスタイルなどすべてに関して『てめえでやれ』と言うんです。すべて自分で、責任を持ってやれということ。それでいて、私が取材で突っ走ったことを言ってしまった時には、『言っちゃったものはしょうがない』と声をかけてくれるような人。後悔のないようやりたいようにやらせてくれて、ものすごく支えていただきました」と感謝しきりだ。
大切な出会いを噛み締めつつ、ますますパワフルに日々を楽しみながら邁進している。そんな研に、“どん底での考え方”について聞いてみた。「多分、誰にでも自分がやりたかったことってあると思うんです。それを思い出してもらって、一歩踏み出してみると楽しいことが見つかるはず。女の人ならば、お花が好きな人も多いと思います。土をいじって、芽が出てきたら、それだけでも『うわあ、かわいい』と楽しくなるはず。ちょっとしたことでもいい。なんでもいいから、やりたかったこと、心が明るくなることに目を向けてみてほしいです」。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
映画『うぉっしゅ』は、5月2日全国公開。
※岡崎育之介監督の「崎」は「たつさき」が正式表記