『鬼滅の刃』花江夏樹、 “想いをつなぐ声”──炭治郎を通して再認識した「誰かのために生きる強さ」
――下野紘さん(我妻善逸役)、松岡禎丞さん(嘴平伊之助役)とは長年ともに作品を支えてきた関係かと思いますが、これまでの収録で「すごい!」と感じたお二人のエピソードは?
花江:もう……常に「すごいな」と感じています。まず下野さんは、現場のムードメーカー的な存在で、いつも明るい空気を作ってくださるんです。下野さんがいると、自然とみんなが笑顔になって、現場がふわっと和むんですよね。
松岡さんは、普段はあまり自分から話されるタイプではないんですけど、『鬼滅の刃』の現場では、年を重ねるごとにどんどん距離が縮まってきていて。気づけば自然に会話が生まれていて、すごく打ち解けた関係になれたなって感じています。
そして何より、お二人のお芝居が本当にすごいんです。下野さんが演じる善逸の、あの叫びまくるギャグシーンは、うるさいんだけど(笑)、それが唯一無二で。毎回「これ、下野さんにしかできないな」と思いながら聴いています。あの全力の振り切り方には、いつも圧倒されますし、純粋に尊敬しています。
松岡さんが演じる伊之助も同じで、一つひとつのセリフに全身全霊で挑んでいるのが伝わってくるんです。ご本人が「この一言で力尽きてもいい」と本気で思っているような迫力があって、その姿勢に刺激をもらっています。隣で演じていると、自分も全力で応えなきゃって自然と思える。それくらい、お二人の存在は大きいです。
――炭治郎・善逸・伊之助の関係性について、今あらためて感じることは?
花江:本当に、すごくいい関係性だと思います。“同期”という特別なつながりもありますし、それぞれがそれぞれに、いい影響を与え合っているんですよね。
伊之助なんかは、最初の頃と比べるとずいぶん変わったと思います。炭治郎や善逸と出会って、人の温もりに触れて、少しずつ優しさや思いやりを身につけていったように感じます。無骨で荒々しいけど、どこか繊細な一面が見えるようになったのは、仲間の存在が大きかったんじゃないかなと。
善逸も、一見臆病で頼りなさそうに見えるけど、ここぞというときには必ずやってくれる。炭治郎や伊之助がピンチのときには、自分の恐怖を押し込めて立ち向かう。その姿には、毎回グッとくるものがあります。
もちろん炭治郎も、そんな二人から確実に影響を受けていると思います。たとえば「刀鍛冶の里編」では、善逸から聞いていた「雷の呼吸のコツ」がきっかけになって、鬼の頸を斬ることができました。そういうふうに、それぞれの言葉や行動が、ちゃんと炭治郎の中に息づいているんですよね。
だからこそ、この三人の絆は、ただの仲間じゃなくて、“戦いをともにしてきたからこその信頼”で結ばれているんだと思います。お互いを支え合い、高め合う、かけがえのない関係だなと、あらためて感じています。