『鬼滅の刃』花江夏樹、 “想いをつなぐ声”──炭治郎を通して再認識した「誰かのために生きる強さ」
――これまでの物語の中で特に心を揺さぶられたセリフや瞬間を教えてください。
花江:強く印象に残っているのは、お館様が無惨に語った「永遠というのは人の想いだ 人の想いこそが永遠であり 不滅なんだよ」という言葉です。このセリフには、『鬼滅の刃』という作品の本質が凝縮されている気がします。誰かのために戦い、その想いが受け継がれていく。人はそうして生き続けるんだと教えてくれるようで、胸に深く刻まれました。
そうした“想いの力”を感じた言葉は他にもあって、たとえば無一郎のお父さんが「人は自分ではない誰かのために 信じられない力を出せる生き物なんだよ」と語る場面も、とても心に残っています。人は誰かのためなら、限界を超える力を出せる。そう信じさせてくれる言葉でした。
そして、炭治郎自身の「人は心が原動力だから 心はどこまでも強くなれる」というセリフも、強く共感した一つです。精神が肉体を凌駕することがある、その信念が炭治郎の根底にあって。それが彼の強さにつながっているのかなと思います。
こうして振り返ると、どの言葉にも共通しているのは、“人は誰かのために強くなれる”ということ。吾峠呼世晴先生は、言葉にするのが難しい人間の本質を、とても美しく、力強く描いてくださっている。読むたびに心を打たれますし、演じる自分にとっても、大きな指針になっています。
――『鬼滅の刃』との出会いが、ご自身の人生観にも影響を与えていると感じますか?
花江:そうですね。この作品と出会えたことで、以前に比べて「死ぬこと」の捉え方が変わったような気がします。誰しも、夜にふと死を意識して、急に怖くなるみたいな経験があると思うんですけど、今はあまりそういう感覚がなくて。不思議なくらい、心が穏やかなんです。
きっとそれは、大切な家族ができたから。子どもたちに、自分の想いや生きた証がちゃんと残っていくのなら、自分がいなくなっても、どこかで生き続けられるような気がして。
『鬼滅の刃』を読んでいて、想いが誰かに受け継がれていく描写にすごく共感するんですよね。それがまさに、今の自分と重なるというか。子どもが少しずつ成長していく姿を見ていると、自然とその想いが強くなっていくのを感じます。
……でも、ちょっと矛盾しているんですけど(笑)、一方で、「もっと生きていたい」とも思うんです。できるだけ長く子どものそばにいたいし、成長を見届けたい。その気持ちはすごく強くて。
だからこそ、この“両方の気持ち”が、すごく人間らしいし、今の自分をそのまま表しているんじゃないかなと思っています。
(取材・文・写真:吉野庫之介)
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、7月18日全国公開。