いしのようこ、デビュー40周年も変わらぬ自然体 30代半ばでの気づきがターニングポイントに
――演じられる寛子はどんな女性でしょうか?
いしの:意志がはっきりしているわけではなくて、割と人に譲ることで自分の人生が決まっていったような感がある女性ですね。結婚した、子どもが生まれたという大事なものをすごく大事に思ってきたんです。そんな大事なものに対して常に自分を譲ってきた感じがあって。娘が独り立ちしてふっと気が付いた時に、自分はどうしたいのか、これから先の人生をどう歩みたいのかを考え出したときに不安が生まれたんですよね。
仕事をしてきたわけでもない、趣味があるわけでもない。「私って…?」みたいな思いにぶち当たってしまった。割と世の中にもそういう女性は多いんじゃないかなとも思うんです。家庭のことに必死で目を向けている間はそっちに集中しているので考える暇もなかったわっていう人が、子どもが独り立ちして、それまで自分のために生きていないから、自分のために生きてくださいって言われた時にどう生きていいか分からない。そういう不安みたいなものを持ちながらもがいているのが寛子なのかなと感じました。
――いしのさんご自身と似ている部分はありますか?
いしの:え~? いつも聞かれるんですけど、役を演じる時は、私ならこうはしないというところを探していくんですよね。役と自分を重ね過ぎないほうがいい気がして。人間だから「そうよね、わかるわかる!」っていうところは当然あるんですけど、共感できる部分をすくいあげていると同じになっちゃう気がするんですよね(笑)。
ドラマ『私があなたといる理由〜グアムを訪れた3組の男女の1週間』場面写真 (C)「私があなたといる理由」製作委員会
――今回、夫である健次郎役は勝村政信さんが演じられました。
いしの:大昔にご一緒して以来の共演だったのですが、勝村さんがお父さんでよかったって思いました。今回のドラマってちょっと変わってるんですけど、ほかの共演者とあまり絡みがないんですね。ほとんどずっと朝から晩までお父さんと一緒に過ごしていることが多かったので、お父さん頼りで。とても頼もしくて、「あ、よかった、お父さんで」って思いました。
――作品のタイトルが『私があなたといる理由』ですが、いしのさんが誰かといる理由として、一番大切だと思うことは何でしょうか。
いしの:そうですねぇ…。好きか嫌いかじゃないですか?
――なるほど…。好きな気持ちが減っていったり、薄まっていったりした時はどうされますか?
いしの:……そんな変わります? 相手を理解できなかったり、分かりあえないことの辛さが好きという気持ちよりも大きくなってしまうと、一緒にいることはしんどいだろうなと思います。でもそれで解消した関係性みたいなものがあったとしても、その人を好きって思う気持ちがなくなるわけじゃないです。さよならしても大好きな人であることには変わりないので。
好きっていう気持ちが減ったとか、薄まったっていうのは幻想だと思います(笑)。好きという気持ちにのしかかってくるものがあったとしても、それを大きく育てないようにすれば、きっとずっと好きでいられる気がします。