大ヒット『スーパーマン』は「美しい偶然」の連続だった ジェームズ・ガンが撮影を振り返る
ガン:僕がこれまで一番多く一緒に仕事してきた俳優だったのがクリス・プラットとジョン・シナで、この二人に関しては本当に恵まれていたと思います。ジョンとはテレビシリーズを2シーズン撮影していて、合計で16時間分くらいのテレビ作品を一緒に作っている。クリスとは映画を通して、たぶん合計で8時間以上は撮っていると思います。
そんな中で思うのは、僕が本当に運が良かったということ。というのも、彼らはどちらも人として親切で、現場の誰に対しても敬意を持って接してくれる人たちだったからです。そして、時間を守って現場に来ることも大事です。僕にとって、ヒーローを題材にした映画を、周りの人たちへの敬意がないような現場で作るんだったら意味がないんです。それは、いつも優しくいろってことでもないし、無理に感じ良く振る舞うという話でもありません。ただ、他人に対して敬意と思いやりを持って接してほしいのです。
映画『スーパーマン』場面写真 (C)&TM DC(C)2025 WBEI IMAX(R)is a registered trademark of IMAX Corporation.
ただ、ヒーロー役を演じる俳優に限った話ではなく、僕の作品に出るすべての俳優に対して求めていることです。本作のヴィランであるレックス・ルーサーを演じたニコラス・ホルトに対しても、僕はまったく同じことを望みました。
――ニコラスも素晴らしい芝居を見せていました。終盤、レックスが涙を流すシーンが印象的で。
ガン:レックス・ルーサーがどれだけひどい奴であるかは分かっているのですが、個人的にはレックスに共感していますし、彼がどうして脅威を感じているのかが理解できます。彼は一生懸命努力して世界で一番になるために働いてきた人間で、自分こそが世界で一番の男だと思っていました。誰にもマネできない発明をして、すべてを手に入れていたのに、突然スーパーマンが現れて、派手でおかしなコスチュームを着て飛んできた。彫りの深いあごや整ったルックスも相まって、すべての注目をさらっていきました。するとレックスは「自分は何者でもない」と感じてしまうんです。その嫉妬心は、誰もが共感できる部分だと思います。
映画『スーパーマン』場面写真 (C)&TM DC(C)2025 WBEI IMAX(R)is a registered trademark of IMAX Corporation.
誰でも一度や二度は嫉妬を感じたことがあるでしょう。レックスもスーパーマンも同じです。欲しかった仕事やパートナーを誰かに取られたりという経験は誰にでもある。だから映画の中のレックスの動機には共感できると思うんです。もちろん彼はかなり悪い奴なんですけどね(笑)。
でも僕は、クラークと同じように完全に人間的なレックスを描きたかった。彼の変化や、物語の中でどう変わっていくかを見せたかったんです。レックスの話はまだ終わっていないと思います。このキャラクターはこれからもたくさん登場するでしょう。特に僕は、お気に入りの俳優であるニコラス・ホルトと一緒に仕事をするのが大好きなので。
――レックスにまた会える日が楽しみです。ところで巨大生物KAIJU(怪獣)も大きなインパクトを残しました。参考にした日本の怪獣映画はありますか?
ガン:もちろんあります。『怪獣総進撃』や『ゴジラ-1.0』など、日本で作られたたくさんの巨大モンスター映画が大好きです。でも日本映画で特に僕のお気に入りなのは、三池崇史や、僕の飼い犬(クリプトのモデルでもある)の名前にもなっている小津安二郎の作品です。日本映画はアメリカの映画にはない形でポップカルチャー的な要素をうまく映画のジャンルに取り入れていると思います。僕はアメリカ映画よりも、東アジア映画の影響をずっと受けてきたと言えます。そこには日本も含まれるし、香港や韓国も含まれています。僕のインスピレーションの源ですね。
(取材・文:阿部桜子)
映画『スーパーマン』は公開中。