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上田麗奈が映し出す、感情の温度――危うさと儚さ、その声に宿る想い

アニメ

■危うさと儚さの先に見える“一筋の光”

――近年の上田さんの出演作を拝見していると、比名子のような“ほの暗さ”をまとったキャラクターが多いように思いますが、そうした役を演じる際に共通して意識されていることはあるのですか?

上田:これまでも思い詰めたキャラクターを演じることは多くありましたが、同じように見えても、みんなそれぞれ違う温度や色を持っていて。だから「こういう子はこう演じる」という決まりは作らず、今回も手探りで、その時々に生まれる比名子だけの息づかいを探していました。

彼女の場合は、16歳の普通の女の子で、精神的にも魂の成熟度としてもまだ大人ではない。会話がつながっているようで、どこか途切れているようにも見える。その曖昧さや“ライブ感”が彼女らしさだと思い、セリフごとにニュアンスを固めすぎず、その場の空気や相手の温度感で変わる受け答えを大切にしました。練習で作り込みすぎず、現場で自然に生まれるものを優先しています。


――カテゴライズしないからこそ、そのキャラクター個々の魅力がより引き立つのですね。また、本作ではエンディング主題歌「リリィ」を比名子役として担当されていますが、彼女が歌うというのは少し意外でした。

上田:そうですよね。でも、実際に比名子として歌ってみると、意外と違和感はなかったんです。完成した音源を聴いてみると、歌詞には彼女の今の状況が色濃く反映されていて、その危うさや儚さ、脆さが自然に香ってくる。

そして最後には、ほんの少しですが“希望”を感じさせる流れになっていて、本編のもどかしい展開の中で、エンディングの彼女の声が一筋の光を見せてくれる。それだけでも救われるような感覚がありました。「本編でこの歌を歌っている比名子を見てみたい」と思わせるエンディングになっていると思います。

ただ、比名子にとっての“希望”は、自分が死んで待っている人のもとへ行けること。それはホラー的な意味ではなく、別の種類の怖さや危うさを孕んでいる。だからこそ、エンディングでは本編とは少し異なる、怖さを感じさせにくい柔らかな笑顔や声色を意識しました。普段は見せない珍しい比名子の表情を感じてもらえると思います。


(取材・文・写真:吉野庫之介)

 テレビアニメ『私を喰べたい、ひとでなし』は、10月2日よりAT-Xにて毎週木曜22時30分、TOKYO MXにて毎週木曜23時30分放送。ほか各局にて順次放送開始。

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