多部未華子「自分って古い人間なんだな」――価値観を揺さぶられた新発見

俳優人生の中でも、今回の現場は特別なものになった。それは、寺島をはじめとする先輩たちが作った空気感の中で、これまで自身が築いてきた“壁”が自然と取り払われたからだという。
「しのぶさんは『これってこういうことでいいんだよね?』とか、『もう私、緊張しちゃう』とか、ご自身の気持ちを織り交ぜながら現場にいてくださるんです。だから私も『それってそういうことですよね』と聞きやすくなって。今までも言えない現場だったわけではないのですが、私はもともと現場で人と会話をするのがすごく苦手で。今回は、そういう自分の壁を取っ払ってくれる人たちがたくさんいたなと思います」。
そして、多部を最も驚かせたのは、若い助監督の存在だった。監督に対し、臆することなく意見を述べるその姿に、時代の変化を痛感したという。
「助監督さんが『俺はこのカットあった方がいいと思うんすけど、どうっすか、監督?』みたいな、すっごく軽い口調で提案するんです。それが結構衝撃で。監督も『なるほど、そういうカットがあってもいいか』と受け入れる時もあれば、『いや、俺はそういう画はいらないから』と返す時もあって。みんなで意見を出し合って、一つのシーンを作っていく。そんな現場は初めての経験だったかもしれません」
その光景は、自身のキャリアの原点にあった記憶を呼び覚ます。10代の頃に見た、今の時代とは全く違う撮影現場の風景だ。
「私、かろうじてまだ体育会系の雰囲気が漂う現場を見てきた世代なので。かなり強く当たられている助監督さんとか、スタッフさんの各部署のヒエラルキーもかなりはっきりしている現場をずっと見てきたんです。今思うと、10代であれを見せられていた日々って何だったんだろうなって思うぐらい(笑)。今は本当にそういうことが減りました。ここ1年ぐらいで特に『自分って古い人間なんだな』って身に染みて感じますし、身をもって変なことを言わないようにしようと思います。だから、どんどん喋らなくなると思うんですけど(笑)」。
「この作品で今後はオープンになれそうか?」と問うと「そういう風になれるキャストの方とまた出会えたらいいな、という他力本願です。はい、他力本願で生きています(笑)」と多部らしいマイペースな回答に周囲もほっこり。

