咲妃みゆ、宝塚退団から8年 人気演出家からのオファー続く「面白い俳優だなと思ってもらえる俳優人生を歩みたい」

――咲妃さんは今年初舞台から15年を迎えられました。この15年を振り返るとどんな15年でしたか?
咲妃:本当にたくさんの経験が詰まった15年で、どれもが今の自分にとって欠かすことのできないものだったなと感謝が募ります。いつまで舞台に立たせていただけるかわからないですが、これからも経験を重ねていけるものと信じてますし、どんどん進化する俳優であれたらなと思っています。
――今回の松尾スズキさんもそうですが、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん、福田雄一さんと名だたる演出家からのオファーが続きます。
咲妃:こんな有難いご縁が自分に待っているなんて、15年前は想像していなかったですし、そのすべての出会いは決して自分の力だけで得られたものではないと心から思うので、感謝しかありません。いろいろな挑戦をさせていただく中で、「この俳優面白いな」と演出の方々に思っていただけたことが、とてもうれしいです。
福田雄一監督は、舞台『千と千尋の神隠し』をご覧くださったときに、「あ!きっとこの女優さんはコメディいけるな」と思われたそうなんです。その時演じさせていただいた役はコメディ担当ではなかったのですが、どういう方が舞台をご覧くださるかわかりませんし、何をキャッチしてくださるかもわからないものだなと思いました。
――ご自身の中に、コメディは得意!という感覚は…。
咲妃:得意だとは1ミリも思ったことはないのですが、センスは隠し持ってるねと言っていただくことがあります、実は。いろいろな共演者の方が、そういう要素を引き出してくださったおかげで、コメディのセンスを見出してもらえたのかなと思います。
――咲妃さんは、「日本初演」「世界初上演」などの作品にご出演されることが多いように感じます。主催や演出陣からの信頼の表れだと思いますが、初演物に挑まれるときの心境はいかがですか?
咲妃:0から作り上げるというのは、皆さんで団結しないと成し遂げられないことですので、そういう時の結束力が私はとても好きなんです。稽古でトライ&エラーを繰り返しながら、絶対にこの作品を届けるんだという強いエネルギーが満ち溢れている創作現場に身を置けることがすごく好きですし、自分がどういう役割を担えるかなと考えるのも好きなんだと思います。挑戦し続けることは自分の目標の1つですので、これからも率先して未知数の場に挑んでいきたいです。

――2025年はご出演のドラマ『波うららかに、めおと日和』も話題になりましたし、映画『やがて海になる』も公開に。映像作品での経験はご自身にとってどんな糧となっていますか?
咲妃:映像に携われたからこそ、舞台とはまた違う役への向き合い方、アプローチを学ぶ機会があったりと、得難い経験が数多くありました。1シーンを作り上げるうえでどれほど多くの方が関わり、そしてたくさんの方々の思いが集結した映像が視聴者の方に届いていくことには、舞台創作と似た感動があると感じています。
――『めおと日和』は、来年宝塚でも舞台化されますね。
咲妃:そうなんです! びっくりしましたけど、朝美絢さんが主演されるということでぴったりだなと思いましたし、とても楽しみです。
――宝塚では咲妃さんとご縁のある鳳月杏さん、朝美絢さん、永久輝せあさん、暁千星さんがトップスターとして活躍されています。退団後、外からご覧になる宝塚は咲妃さんの目にはどのように映りますか?
咲妃:私が在団していた頃にOGの方が「あの舞台に立っていたことが信じられない!」とおっしゃっているのをよく耳にしていました。当時は「本当にそうなのかな?」と思っていたのですが、自分もいま同じように感じています。とてつもない運動量なんですよ、宝塚って。ほとんどの作品をシングルキャストで務め上げていらっしゃることが、本当にすごいなと思いますし、徹底的に宝塚的美学を追求する信念の強さは唯一無二だと思います。110年以上受け継がれてきた思いがあるので、それを今後も継承していく方々への尊敬が、卒業して年を重ねていくごとに増していっています。
――咲妃さんもその歴史の継承者のお一人ですから。
咲妃:そうだったはずなのですが、ちょっと信じられない。夢の世界にいたのかな?と思うくらいですね。本当にたくさんの財産をいただいた場所であり、これから重ねていく16年目、17年目以降もふるさとあってこその私なので、その感謝の気持ちを持ち続けて、一OGとして歩んでいきたいなと思っています。
――今後、どんな咲妃みゆという俳優の姿を見せていきたいですか?
咲妃:役柄でいうと、母親のような、大切な存在を守る役にチャレンジする機会に恵まれるとうれしいです。『千と千尋の神隠し』で母親役をいただいたのですが、すごく特別な気持ちになったんです。誰かを見守る、育てる時にはたらく感情への興味がすごくあるので、そういうお役に出会えたらうれしいなと思います。
あとは年齢を重ねていく中で、これまで演じたことのないようなお役で舞台に立つ機会が増えていくといいなと思います。そのためには自分の色を定めすぎないことが大切かなとも思うので、いろいろな挑戦をさせていただく中で、面白い俳優だなと多くの方に思っていただけるような、そういう俳優人生を歩んでいけたらと願っています。
(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)
COCOON PRODUCTION 2026『クワイエットルームにようこそ The Musical』は、東京・THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)にて2026年1月12日~2月1日、京都・ロームシアター京都 メインホールにて同年2月7日~11日、岡山・岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場にて同年2月22日・23日上演。

