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中村倫也「汗をかかずにお金をもらうのが怖い」 “容易な成功”への抵抗と仕事の美学

ドラマ

■“無敵状態”を経て気づいたレベルアップなきゲームの虚しさ

 劇中の若者たちがそうであるように、中村にもまた、夢に向かって爪を研いでいた時期があった。今でこそ毅然とした空気をまとい、自然体で現場にたたずむ中村だが、20代の頃は違った。自身を知ってもらうために、緻密な計算と戦略を巡らせていたのだ。

 「若い頃はまず知ってもらう必要があったので、打算的なくらい細かく目標を設定し、計画を立てていました。でも、いつしか自分が想像していた以上の反響をいただく無敵状態のような時期が2年間ぐらい続き、それを経験したことで、感覚が変わったんです」。

中村倫也
 NHK連続テレビ小説(『半分、青い。』)への出演を機に訪れた、中村が言うところの“無敵状態”。自分の描いた設計図以上に世界が広がり、大きな反響を得たという。評価が追いついてきた時、かつて抱いていた渇望の形が変わり始めた。35歳を過ぎた頃、明確だった目標は、あえて輪郭をぼかしたものへと変化していく。

 「時が経ち、当時の熱狂を冷静に見つめ直せるようになった今、キャリアや人生の目標はあえて漠然とさせるようにしています。狙ってかなえるよりも、気づいたらそうなっていたという形の方が、人生は楽しいんじゃないかと感じるようになったんです」。それは決して、野心を失ったわけではない。むしろ、キャリアを重ねた俳優だけが直面する、ある種の容易さに対する抵抗とも言える。

 「すごくおごった表現になってしまうかもしれないので難しいのですが、ある程度自分のことを知ってもらえると、下手に夢を語るだけで周りがかなえてくれようと動いてくれるんです。それは、自分的に草むらでのレベルアップを経ずにいきなり魔王城に着いてしまったような感覚で、物足りないんです。簡単にクリアできるゲームより、難易度が高い方が面白いですから」。

 自分の想像以上の結果が出てしまった時、人は往々にして慢心する。しかし、中村の中にあったのは調子に乗るという感覚ではなく、むしろ戸惑いに近い冷静さだった。届かないからこそ立てられた目算が、届いてしまったことで狂いが生じる。ありがたいエラーを前に、浮足立つことなく、恥ずかしさを抱えながらただ静かに自分を見つめ直していた。

 「調子に乗れるような性格ならもっと楽に生きられたんでしょうけど、どうしても恥ずかしさが勝ってしまう。30年間浮かれた経験がないので、浮かれている役を演じるのは苦手かもしれません(笑)」。

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■汗をかかない報酬への恐怖

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