峯田和伸×若葉竜也、伝説映画から受け継がれた表現者のバトン【映画『ストリート・キングダム』インタビュー】
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――実在の人物をモデルにした役を演じる上で、意識されたことはありますか。
若葉:当時の懐かしさを描く回顧主義の映画ではないので、モノマネではなく、どこまで自分が戦えるかという点に集中しました。僕が捉えたモモという人物は、現代の若者のフラストレーションや怒りを一身にまとった「亡霊」のようなイメージです。本気で物を作っている人間につきまとう寂しさや悲しさを抱えた存在として演じました。
――峯田さんは、原作者である地引雄一さんをモデルにした役を演じていかがでしたか。
峯田:地引さんのことは意識しつつも、現場で起きる感情を優先しました。かつて『アイデン&ティティ』では悩む側だった僕が、今回はもがいている彼らを見守る立場になった。「自分もバトンを渡せる立場になってしまったんだな」という感覚はすごく新鮮で、不思議なものでした。
――かつての自分に近い役柄を見守る側に回ったことで、心境の変化はありましたか。
峯田:『アイデン&ティティ』撮影当時はとにかく必死で、自分でも手応えがあったかどうかよく分かっていなかったんです。でも、月日が経って若い表現者たちから「あの作品が僕にとって最高なんです」と言われることで、ようやく自分のやってきたことを肯定できました。今回、若葉くんや間宮(祥太朗)くん、太賀くんにしろ、みんなが強い熱量を伝えてくれる。彼らにバトンを渡せるというのは、感慨深いものがありますね。
峯田和伸
■時代を超えてリンクするパンクの衝動と「本物の出来事」
――劇中のライブシーンは非常に生々しく描かれていました。撮影を振り返っていかがですか。
若葉:時代は違えど、感覚は現代なんです。自分たちが今抱えている憂鬱や、ものを作る上での弊害をフルにぶつけました。ラストのラジカセを聴くシーンなどは、台本には「泣く」なんて書いてなかった。峯田さんの目線や声に体が震えて生まれたもので、お芝居というより「本物の出来事」に近い感覚でした。僕自身、最近の環境の変化に対する葛藤があったので、セリフの一つひとつが肉体的な叫びになりました。
若葉竜也
峯田:いちロックファンとして、当時の渋谷「屋根裏」や新宿「ロフト」を再現したセットには興奮しました。客がタバコを吸いながら斜に構えて見ている中で演奏が始まる空気感。僕は当時のパンクをリアルタイムで見たわけではないですが、撮影を通して追体験できました。「はい、カット」となった瞬間に、エキストラの方々から自然と拍手が起きたのは、まさに日本でパンクが鳴った瞬間を体験できたようで最高でした。
――峯田さんご自身のバンド活動の記憶と重なる部分はありましたか。
峯田:僕がバンドを始めた90年代後半の西荻窪などの景色と地続きだと感じました。フリーペーパーを作る奴がいて、チラシを配って……。昔を題材にしていますが、かつて対バンしていたバンド仲間の顔が浮かんでくるような、今の自分たちにもつながっている映画だと思いました。
――若葉さんは、ボーカリストとしての役作りにどう励みましたか。
若葉:めちゃめちゃ緊張しました。オフィシャルの練習だけでは間に合わないと思い、バンドメンバー役の吉岡(里帆)たちと自分たちでお金を払ってスタジオを借りて練習を重ねました。自分たちで能動的に動かなければならないという衝動に駆られた、あの時間は大切でしたね。

