若村麻由美、「仲代達矢さん・宮崎恭子さんご夫妻の“演劇DNA”が自分の中にはある」――弱くなった時はそう信じて頑張る

――これまでさまざまな役どころを演じられてきた若村さんですが、ターニングポイントを挙げるとするとどんな作品になりますか?
若村:最初は、やっぱりPARCO劇場で無名塾が公演した『シラノ・ド・ベルジュラック』。もともと私はPARCO劇場で無名塾のお芝居『ハロルドとモード』を観たことで、今ここにいるんですね。なのでPARCO劇場というのは私にとっては聖地であり、演劇人としてのふるさとというか、本当に特別な思い出のある劇場なんです。そういう意味でも、大抜擢していただいた『シラノ・ド・ベルジュラック』で、仲代(達矢)さんの相手役、ロクサーヌをやらせていただいたというのが1つの演劇人としてのスタートでした。
次は、TPTでデヴィッド・ルヴォー演出の『テレーズ・ラカン』という作品。ベニサン・ピットという小さな劇空間で、とても緊密なお芝居をさせていただきました。
そのあとは幅広くいろんな作品に出会わせてもらいましたが、特にこの1年はバラエティー豊かなものが集約された年という感じで心に残っていますね。昨年の今頃に稽古をしていた『陽気な幽霊』では、文字通り陽気な幽霊役でしたけど、ちょっと人間離れした存在として華やかに楽しく動き回るみたいな感じで。そのあと、昨年から今年にかけては『飛び立つ前に』で、フロリアン・ゼレール作×ラディスラス・ショラー演出という組み合わせに4作連続して出させていただけた。しかも今回はおばあちゃんの役で、日常生活の中にある人間の心理の深いところを描く作品と出会えたことが、自分の中ではとても大きかったですね。
そしてここに来ての“女王”。この続けての3作があまりにも違いすぎて、稽古に入るたびに周波数を合わせていくのに時間がかかるんですけど、この1年全く違う役をさせていただいたことで、役者っていう仕事は面白いなって改めて思えるようになってきました。
――本作の後には『頭痛肩こり樋口一葉』でまた幽霊になられますね。
若村:そうですね(笑)。栗山さんの演出で、4回目になりますが今回は私の花螢の集大成だと思っています。

――これまでのキャリアの中で、追いかけたい、こうなりたいと思われた背中はどなたになりますでしょうか?
若村:憧れたというと、やっぱり最初に『ハロルドとモード』で観た宮崎(恭子)さんですね。初めて観た時の衝撃というのが強くって。ただ宮崎さんは、役者としてはその『ハロルドとモード』からなさっていないので、“追いかけ続けた背中”というと仲代さん。背中が大きすぎて“追う”というところまでいけないですけど、でも、仲代さん・宮崎さんご夫妻の“演劇DNA”みたいなものが自分の中にはあると、自分が弱くなった時にはそのことを信じて頑張ろうと思っています。
――先ほど役の振れ幅が大きい1年だったというお話がありましたが、今後“俳優・若村麻由美”をどういう形で伝えていきたいと考えられていますか?
若村:昔から目標というものがないんです(苦笑)。あまり計画性がなくって。
――意外です。すごくきっちりといろいろなことを考えられている方かと…。
若村:いや、ないんです、計画性が。なので、「あなたにこれを…」と言っていただいたら、ありがたくやらせていただくということでここまで来たんですよね。早くおばあちゃんの役がやりたいって周りにずっと言っていたのですが、『飛び立つ前に』で叶ったので、この道も開かれたなという感じですし。
「この人にあれをやらせてみよう」と思っていただけるなら、それにチャレンジしていく、そういう役者でいたいと思っています。
――では最後に、今回の作品を楽しみにされているファンの皆様へメッセージをいただいてもよろしいでしょうか。
若村:大きなことになりますが、「人間とは」というところがあらゆるシーンから見えてくる。野心、策略、信頼、裏切り、愛。そういう人間のさまざまなものが見えてくる作品になると思います。
(取材・文:渡那拳 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG inc])
パルコ・プロデュース 2026『メアリー・ステュアート』は、東京・PARCO劇場にて4月8日〜5月1日、福岡・J:COM 北九州芸術劇場 大ホールにて5月9日~10日、兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて5月14日~17日、愛知・穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホールにて5月21日~23日、北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)にて5月30日~31日上演。

