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貫地谷しほり、出産後初舞台『頭痛肩こり樋口一葉』開幕! 樋口一葉の生き様をみずみずしく描く

演劇

こまつ座第160回公演『頭痛肩こり樋口一葉』舞台写真
こまつ座第160回公演『頭痛肩こり樋口一葉』舞台写真 撮影:宮川舞子

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貫地谷しほり

香寿たつき

瀬戸さおり

岡本玲

若村麻由美

 井上ひさし戯曲の不朽の名作で、こまつ座の重要レパートリーのひとつでもある『頭痛肩こり樋口一葉』が、栗山民也演出のもと東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて開幕した。

【写真】貫地谷しほり、岡本玲、若村麻由美ら出演 『頭痛肩こり樋口一葉』舞台写真

 本作は、明治という激動の時代に才能を惜しまれながらも24歳6ヵ月の若さで早世した樋口夏子こと、樋口一葉の生き様を、彼女を取り巻く女性らとともに描いていく物語。夏子がしたためた日記を軸に、生活苦や社会の理不尽と戦いながらもたくましく生きた女性たちの姿をみずみずしく朗らかに立ち上げていく。

 2022年に引き続き夏子を演じるのは、本作が出産後の初舞台となる貫地谷しほり。このほか、増子倭文江、香寿たつき、瀬戸さおり、岡本玲、若村麻由美ら実力のある俳優らがそろった。

 舞台にかかる紗幕には原稿用紙が描かれており、隅のわずかな滲みから文学に向き合う夏子の苦労が窺えるよう。物語の多くは、夏子が母や妹と暮らす借家で描かれる。中央には仏壇が鎮座、手前の縁側には精霊馬が置かれており、毎年のお盆の日を中心に話が進んでいく。

 夏子(貫地谷しほり)は、17歳にして樋口家の筆頭戸主となり、貧困に喘ぎ、迷いながらも戸主としての務めを果たそうとする。作家として広く名を知られ、作家一筋のように勝手に思いがちだが、ある時は先生を志しては諦め、歌塾に入門するも女中や小間使いのように扱われるなど、苦労のわりに報われない貧しい生活を送っていた。

 母親・多喜(増子倭文江)からは戸主とは何たるかを語られ、母や健気な妹・邦子(瀬戸さおり)の暮らしを守るために、夏子の細腕に樋口家という重圧がのしかかる。夏子はその重圧から自ら戒名を決めるなど、いつしか心をあの世へと置くようになる。そのせいか、お盆には乳姉妹のお鑛さん(香寿たつき)や夏子の旧友・八重(岡本玲)といったあいさつに訪れる人々とともに、花螢(若村麻由美)と名乗る幽霊が夏子のもとに訪れるようになる――。

 女性たちが織りなす会話は、井上ひさし独特のリズミカルでユーモアあふれる言葉遊びに満ちており、ゲネプロながら客席からは自然と笑いがこぼれる。しかし、その笑いの裏には、それぞれの女性が背負う過酷な運命や悲哀が静かに横たわる。

 花螢役の若村は、白い着物をひらひらとさせながら舞うように舞台上に現れ、妖しくも美しい。かと思えば、一番笑いを誘ったのも彼女ではないかというくらい、チャーミングな幽霊を好演していた。

 母・多喜は常識や世間に縛られ、女とはかくあるべきと信じたばかりに夏子らには苦労をかけてしまう。時に苛立ちを覚えるが、子や家を想う気持ちが根底にあることを増子は常ににじませており、共感を覚える人物に見せていた。邦子を演じた瀬戸は、家事や手仕事に追われながらも母の世話を焼き、夏子をいつも気にかけていて実に健気。どんな苦境でも倒れないしなやかな強さを感じられる。

 香寿が演じるお鑛さんは、多喜との絶妙なコンビネーションで、少々暗い話題もパッとかしましく華やかにする。またその歌声も聴きどころのひとつだろう。夏子の友人・八重には、波乱万丈な人生が待ち受けており、劇中で性格もガラッと変わってしまうが、岡本は二面性ともいえるほど女のたくましさを熱演した。

 そして、どんなときも暮らしや社会を冷静に見つめ、大きな重圧を背負いながらも筆を走らせた夏子。どこか達観している夏子を、貫地谷はおおらかに演じ、彼女の稀有な才能を際立たせる。だが、忘れてはならないのは、夏子はまだまだ若き乙女の年齢だということ。そのことが、合間に見せる苦悩の姿、社会への皮肉の言葉の重さをより感じさせる。

 栗山民也の演出は台詞劇としてのテンポ感を際立たせてコミカルに見せながらも、男性に振り回され、噂話に翻弄され、社会に爪弾きにされる女性たちの悲哀を浮き立たせる。作中には、どこか懐かしさを覚えるような歌が随所にちりばめられ、時に慰めのように心に響く。「人は貧しさの中でも誇りを持って生きられる」という作品の根底に流れる問いを、現代を生きる私たちの胸に静かに、そして強く投げかけてくるようだった。

(取材・文:宮崎新之 撮影:宮川舞子)

 こまつ座第160回公演『頭痛肩こり樋口一葉』は、7月29日から8月30日、紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演。9月から群馬、岡山、岐阜、山形、石川、大阪でも上演される。

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【公演概要】

こまつ座第160回公演『頭痛肩こり樋口一葉』

■公演期間

東京公演
7月29日(水)~8月30日(日)
劇場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

群馬公演
9月5日(土)9月6日(日)
劇場:高崎芸術劇場

岡山公演
9月10日(木)9月11日(金)
劇場:岡山県芸術創造劇場ハレノワ(中劇場)

岐阜公演
9月14日(月)
劇場:可児市文化創造センターala(主劇場)

山形公演
9月18日(金)
劇場:川西町フレンドリープラザ

石川公演
9月22日(火)9月23日(水)
劇場:能登演劇堂

大阪公演
9月26日(土)9月27日(日)9月28日(月)
劇場:梅田芸術劇場シアタードラマシティ

■作
井上ひさし

■演出
栗山民也

■出演
貫地谷しほり 増子倭文江 香寿たつき 瀬戸さおり 岡本 玲 若村麻由美

【公式サイト】https://www.komatsuza.co.jp/
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