『ドライヴ』鬼才監督が激白!地獄を見た破産から、宮崎駿監督とのタッグ熱望まで
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前作『ドライヴ』はラブストーリーというコンセプトのもと、ヒロインを守る主人公の姿をクールに描くわかりやすい物語だった。今回はバンコクを舞台に、元警官・チャンに兄を殺されたゴズリングが血で血を洗う報復に身を投じていく。そのシンプルなストーリーラインとは裏腹に、人間をマネキンのように配置する演出やカラフルな原色照明を多用した画作り、“静”と“動”を混在させた異様なバイオレンスシーンが強烈な個性を際立たせる。シンプルなストーリーラインの中にも、実は神話世界を仮託したかのような意味深な場面が挿入されている。
ニコラス監督は「僕の中では『ブロンソン』以降の作品はすべて同じ延長線上にあると思っている。物語や設定は違うけれど、実はすべて同じ主人公の物語でもあるんだ」と持論を展開し「もちろん今回は“母親の子宮に戻りたい”と思っている男の話でもあるわけだけど」と異様な裏テーマを説明する。またカラフルな原色照明や人を人と思わせないような配置については「僕は『サスペリア』が大好きだし、CGに頼らず現場にあるものをフルに使って異質な世界を作る作業も好き。そもそもお金もないし、編集段階でのデジタル処理にも興味がないので、シンボリズムを大切にしつつ、人間を単なるプロップとして配置しながら作り上げていった」とそのからくりを明かす。
どこか観念的で神話世界を彷彿とさせる本作は、盟友マッツ・ミケルセンを主演に北欧神話にインスパイアされた『ヴァルハラ・ライジング』に似通うところがある。この作品の続編は日本を舞台に製作されるとの情報もあったが「それはよくあるネット上のデマ」と否定しながらも「ただし日本で作品を作るのは本当だ。今のところのタイトルは『アベンジング・サイレンス』にしているけれど、それは『ヴァルハラ・ライジング』の続編ではない。ただし何度も言うように『ブロンソン』以降の主要人物たちは同じ核を持っている、根本的には同じ人間。そんな主人公が日本を語る物語を撮るつもりだよ」と吉報を教えてくれた。
ニコラス監督は、自宅に悪趣味イタリア映画の最高峰『食人族』の巨大ポスターを貼りつつも、三鷹の森ジブリ美術館に足を運ぶほどの「スタジオジブリ」フリークでもある。宮崎駿監督の引退は世界的なニュースにもなったが「いやいや、引退なんてことは絶対にない。だって彼は何度も『引退する』と言ってそれを撤回してきたから」と受け入れず「それに僕は彼と一緒に映画を作りたいと思っているんだ。タッグを組むとしたら、相当変な映画が完成するだろうね」と、ニコラス監督は最後まで宮崎監督の引退を認めなかった。
映画『オンリー・ゴッド』は1月25日より、新宿バルト9ほかにて全国公開。