ムロツヨシ、森田剛の殺人鬼役に「なんてハマリ役」“恐怖”を感じた説得力
その、森田演じる殺人鬼と対極にいるのが、ムロがノドから手が出るくらい欲しかった役、安藤だ。奇声は発するけれど、目が死んでいて無表情、という見るからに変な人。「原作はもっと表情豊かな人なんですが、相棒役の濱田くんや吉田監督と現場に入ったときに、これかなって。その時の自分の感覚にまかせて判断しました」と照れ笑い。
しかし、完成作品を観た限りでは、安藤の奇抜な言動、行動、髪型?は、恐怖に溺れそうな観客にパーンと浮き輪を投げてくれる、そんな存在にも思えてくる。「安藤は、犯罪者一歩手前のピュアな男。チェーンソーは買って家に置いてあるんですが、使わない。使わないけど、“切っちゃうかもよ!”と脅かす恐さもある」と、結局得体の知れない存在なのだが、いわゆる「悲劇の裏に潜む喜劇」、その象徴ということか。
今回、シリアスな演技も随所に披露しているムロ。「口では喜劇役者と言っていますが、本当は、笑いが一切ないシリアスだけの自分も観てみたい」と語る。 そんなムロと主演の森田、そして一番ノーマルな青年を演じた濱田との間に、いったいどんな化学反応が起きるのか。役者同士のぶつかり合いも、見応えのある作品だ。(取材・文・写真:坂田正樹)
映画『ヒメアノ~ル』は5月28日より全国公開。