ジャイアン役声優・木村昴、たてかべ和也さんには「かなわない」交流深めた宝物の日々
声優発表のニュースが流れた日から「同級生からも“ジャイアン”と呼ばれるようになった」と笑うが、「自分がジャイアンなんだと実感を持つまでには5、6年かかった」と大役を手にしたのは、不安と戦うことでもあった。そんなとき一番の支えとなったのが、たてかべさんの存在だ。「高校3年間の文化祭と体育祭は毎年、たてかべさんが見に来てくださった」と親子のような親交があったそう。
「“どこに行ったかな”と探すと、体育館でリサイタルをやっていたりするんです!声優を引き継いだときに、“これからは昴がジャイアンだ”と言ってくださったのに、たてかべさんが“俺はジャイアン!”と歌っている(笑)。同級生は“本物が来たね”と大喜び。大暴れして人気者になっている姿を見て、やっぱりこの人はジャイアンをやるために生まれたんだなと思った。かなわないなと思ったし、みんなが喜んでいるのを見て僕も鼻が高かった。この人の後を継ぐのは大変だ、頑張らないとと身の引き締まる思いもしました」。
「僕とお酒を飲むのを楽しみにしていて、毎年、誕生日祝いをしながらカウントダウンしてくださった」と会う機会も多かったが、「演じる上でのテクニックを教えてもらったことはないんです」と告白。「“ジャイアンは豪快なヤツだから思い切りやれ”。その一点張りでした。迷ったときはその言葉を思い出すようにしています。“ジャイアンはお前のものだ”と言ってくださったのが、本当にうれしくて。たてかべさんが言うんだから、自分も自信を持たなきゃ失礼だと思った。たてかべさんには“今も豪快にやっています!”とお伝えしたい」と心からのメッセージを送る。
「『ドラえもん』は人生の中心にある」と語るのは、たてかべさんから大事な役を受け継いだことともうひとつ。関智一と出会えたからだ。「高校を卒業するときに、関さんに“どうしたら365日、お芝居をやっていられますか?”と相談したんです。関さんは“劇団をやれば?”と言ってくれた。僕は高校卒業と同時に劇団を旗揚げして、今でも続けています。関さんは、僕にとって公私ともに師匠。背中を追いかけ続けています。いつか“いい後輩を持った”と言ってもらえたら、すごくうれしい」。話せば話すほど、先輩への感謝やジャイアンへの愛が溢れ出す。優しく、アツい男・木村昴のジャイアンがこれからも世界中を元気にすることだろう。(取材・文・写真:成田おり枝)
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