吉岡秀隆、よくしゃべる金田一耕助役で「僕も頭をかくクセがつきました」
吉岡にとって、吉田監督は「もっと一緒にいたいけど、1年に一回でいい、と思っていた」という存在らしい。
「監督、NGがないんですよ。すべてOK、すべて1回撮り。すごく緊張感はあるけど、いつも朗らかだし、どんな状況でも受け入れてくださる。それが逆に怖いんですよね(笑)。だから僕にとっては、吉田監督の作品は“修行の場”です」。
今回の金田一役も、台本にして約30ページほどにわたり、金田一が謎解きを語っていくシーンがあり、またもや壮絶な“修行”となったようだ。吉岡は「台本が進むに連れてどんどん面白くなり、どんどんセリフが増えていく(笑)。これはいじめなのかな、と思うくらいよくしゃべる金田一です」というが、この長大なシーンにも吉田監督ならではのアクシデントが。
吉田監督は「その長いシーンは、本当は2日間くらいに分けて撮るつもりだったんです。でもあまりにも良かったので、本当はカットを掛けなきゃいけないところでカットを掛けずにいたんですよね。そしたら先に記録メディアが終わるという(笑)」と振り返る。
「(吉岡が)1日目のセリフだけでなく、その膨大な量をすべて覚えてくださったというのに驚きました」と監督は感嘆するも、吉岡は溜まったものではない。「僕、演じながら『カットいつ掛けてくれるんだろう』って思ってましたよ!? だってピーって音が鳴って、明らかにカメラ止まってるんですもん(笑)」と緊迫感あふれるシーンをユーモラスに振り返る。
『金田一耕助シリーズ』というと片田舎が舞台のイメージが強いが、この『悪魔が来りて笛を吹く』の舞台は東京。旧家族のドロドロとした人間関係やおごり、それらが生み出した怨念と悲劇を描いた物語だ。吉田監督が「今まで一番面白い金田一耕助作品になったんじゃないかな」と自ら太鼓判を押す今作、かつてない“金田一”を観ることができそうだ。(取材・文/川口有紀)
『悪魔が来りて笛を吹く』はNHK‐BSプレミアムで7月28日21時より放送。