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酒井若菜「処女作が小説というのは誇り」 10年前のデビュー作が文庫化

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酒井若菜、『こぼれる』インタビューフォト
酒井若菜、『こぼれる』インタビューフォト クランクイン!

 女優・酒井若菜。多くのドラマや映画でその魅力を発揮する一方、近年はエッセイの執筆、「marble」「水道橋博士のメルマ旬報」などで編集長業務に携わるなど“物書き”としての顔も見せる。そんな彼女が2008年に出版した自身初の小説『こぼれる』(キノブックス文庫)が今月文庫化された。現在の活動の原点ともいえる本作への想いや、自ら相乗効果を感じているという“演じること”と“書くこと”について話を聞いた。

【写真】『こぼれる』文庫化記念 酒井若菜インタビューフォト

 本作の主人公・雫は22歳の書店員。彼女がアルバイト先で一目惚れした大介には妻子がいた。大介との関係に悩み苦しむ雫は、とうとう彼と別れることを決意するが、ある出来事が…。本書は雫、大介、雫に一方的に恋する大学生、大介の妻という4人それぞれの視点から描かれた物語が章ごとに展開する連作短編集だ。「恋愛小説を書くつもりはなかった」と酒井自らが言うように、人生を“ルービックキューブ”になぞらえ、自分の気持ちや周囲との関係に傷つき思い悩む人たちの姿が描かれる。

 小説を書くことになったきっかけを「最初はブログ本を出しませんか?というお話だったんです。それが、文章をストックするのであれば、どうせだったら書き下ろしちゃえば?という話になり…」と振り返る。初めての出版がいきなり小説というのは珍しいケースだが「今となっては、怖いもの知らずで、それで良かったと思います。本を出すことの重み、大変さを踏まえた上での小説となると足踏みしていたかも。無知な強さで一番ハードなジャンルに行けた」と語る酒井。「はじめはPCの電源の入れ方もわからなかった」と笑うが、完成までに1年半を費やした作品だけあり、思い入れは強い。

 そんな作品が10年ぶりに文庫として復刊することを聞いたときには「嬉しさ半分、恥ずかしさ半分という気持ち」だった。「ずいぶん前の作品だし、読み返せないくらい拙い文章だというのは私自身が一番知っていたんで。あの子がもう一回世の中に出てくれるというのは、恥ずかしいけどうれしい。いろんな思いが駆け巡りました」と明かす。


酒井若菜、『こぼれる』インタビュー

 文庫化にあたっては加筆修正も行った。「大介のことも、当時はなんて素敵な男性! 理想の男性像が書けたわ!なんて思っていたのですが、読み返してみると、なんてひどい男なんだと。20代前半では見えていなかった男のズルさが38になった今は見えてきた」と笑う。単行本にはあった大介の見せ場を大幅にカットしたというが、「個人的には20代の衝動、書いていた当時の気持ちを尊重してあげる」ことを大事に加筆修正した。「あの時の私は何を伝えたかったか、何を書きたかったか、ちゃんと思い出して、20代の酒井若菜をもう一度自分が演じるような感じ」で文庫化に向き合ったとも語る。「文章もそうだし、過去の自分自身にもう一度光を照らしてあげたい。読みやすくすることは必要だけど、当時の拙さは残す。そのバランスを大事にしました」。

 2018年は『こぼれる』のほかに、『うたかたのエッセイ集』(キノブックス)も出版。こちらはメールマガジンから自身でセレクトしたエッセイを収録。ひとりの女性として日々感じることを、ありのまま素のままに綴った。「以前は、怒りがあって、それを伝えたい、負のものを吐き出したいという欲が強かった。それがブログやメルマガを経験することによって、これまでは自分が主人公の文章だったけど、今は読者の方が主人公というか、読者の方に寄り添うような文章になったと思う」とエッセイに臨む心境の変化も感じている様子。

 女優としても、視聴者の心に強い印象を残す作品への出演が続いている。2018年は『透明なゆりかご』『グッド・ドクター』での母親役が大きな反響を集めた。「『透明なゆりかご』は、中絶なども含めた産婦人科のリアルにNHKが正面切って向き合うというのがカッコいいと思いました」。17歳の娘とギクシャクした関係を持ち、辛くあたる面もあるという母親役に「あんな母親最低と反感を買うかな」と思ったそうだが、「私は彼女の気持ちを理解して、彼女は決して悪者じゃないと思って演じた」ところ、想像以上に大きな共感が寄せられた。「俳優としてあの作品に参加できたことは、5年後も10年後も誇りに思えるんだろうなと感じています」。


酒井若菜、『こぼれる』インタビュー

 新年は三上博史が14年ぶりに主演を務めることでも話題の映画『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』(2019年1月18日公開)に、三上の妻で婦人警官の詩織役で出演する。三上を全力で殴るシーンもあるという本作について酒井は「最近のお母さん役を見ている方はびっくりするでしょうし、昔のおきゃんな弾けた役がお好きな方には『帰ってきたね』と思っていただけると思います」と笑う。

 文筆業でのさらなる活躍にも期待が高まるが「書き物をずっとしていく中で、処女作が小説だったというのは誇りだなぁと考えていて。この10年ブログやエッセイを頑張って書いてきて、もう1回くらい小説頑張んないと、女としてカッコ悪いなと。すぐにとは言わないですけど、もう1作は小説に挑戦したいなと思っています」と微笑んだ。

 小説『こぼれる』、エッセイ集『うたかたのエッセイ集』は、ともにキノブックスより発売中。(写真:高野広美)

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