Jホラーブームから20年…中田秀夫監督、自身の作品を観返し「いい距離ができた」
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また、本作で注目すべきは、主演をつとめた池田エライザだ。映画単独主演2作目にして、堂々たるスクリーミング・ヒロインぶりを発揮している。中田監督が池田を主演に選んだのは、ある意味“直感”だったとか。
映画『貞子』より (C)2019「貞子」製作委員会
「結局ホラー映画って “怖がる人”を見るのが怖いんです。特に貞子については、観客が見慣れてしまっている。だとしたら観客は、池田さん演じるヒロインが貞子に迫られる様子を見て怖がるんですよ。そこで重要なのが“目”。僕のホラー映画に出てもらった歴代ヒロインは、思い切り恐怖に目を見開いてもらってきた。そして、それを観る側の人たちは彼女達の不安や恐怖に乗ってホラー映画を怖がり、楽しむわけです。池田さんは元々、目の表現力がとてもいいんですよね」。
ヒロインとして大きな信頼を寄せる池田について、「ここからどんどん、ポスターの真ん中に立つ人になっていく」と言い切る中田監督。思えば、松嶋菜々子の映画初主演作が『リング』であり、その後の飛躍はご存知の通り。この作品はある意味、池田エライザという女優が大きくステップアップしていく瞬間を切り取ったものとも言えるかもしれない。
映画『貞子』より (C)2019「貞子」製作委員会
今や世代を超えて誰もが知る存在になった“貞子”だが、監督は、「名誉なことですよね。僕もそんなふうになるとは思ってなかったし、そもそも『リング』を作ったときはそこまで期待されてなかったと思うんです」と笑って明かす。なぜ貞子は、Jホラー屈指のホラーアイコンとなりえたのか? 監督の分析によると、理由は「シンプルさ」だ。
「例えば、日本の江戸時代に描かれた幽霊画とかも、白い死に装束を着て水辺に立っていますよね。実は『リング』で最初に貞子の衣装合わせをした時、よく見ると小さな花柄が入った衣装も用意されていたんです。でも結局、アップになったときのことを考えて真っ白なものを選んだ。これが結果的に、徐々に幽霊画に近づいていった。クセがない、シンプルなキャラクターだからこそ、時代を超えて受け入れやすいのかなと思います」。
本作の貞子はビデオデッキとテレビではなく、動画サイトから“呪い”が伝染していく。『リング』から20年を経て、“いい距離感”を得た中田監督が生み出す新たなる恐怖を、スクリーンで堪能しようではないか。(取材・文・写真:川口有紀)
映画『貞子』は5月24日より全国公開。