『さよなら、退屈なレオニー』カレル・トレンブレイ、17歳“こじらせ女子”役に込めた思い
寛容な実の父と口うるさい義理の父、対照的な2人の父親との関係性も面白いが、ダイナーで出会った中年男スティーヴとの関係性もとても気になる。「自分の身の丈以上の夢を描き、結局、何も前に進まないレオニーはとてもシニカル。そんなときに、中年ミュージシャンのスティーヴと出会うわけですが、彼は夢も野望もなく、幸せなのか、不幸せなのか、自分でも分からない。『別になんでもいいや』という生き方が、周囲と完全にずれている」とカレルは指摘する。
中年男スティーヴとレオニー
夢を持ちたいと焦るレオニーが、なぜスティーヴに興味を持ったのか。ただ単にギターに関心があったのか? それとも彼とバンドでも作ろうと思ったのか? 「映画を観ている方は、恋愛関係を期待するかもしれませんが、彼女はぜんぜんそんな感情は抱いていない。もちろん、彼らの絆は強く、愛情もあるとは思いますが、恋愛とはちょっと違う。強いて言えば、2人の対照的な父親のちょうど中間にいる存在、もしかすると、『心のバランス』を彼によって保っているのかもしれません。そのあいまいさがこの映画の面白さでもあるんですよね」。
そういえば劇中、レオニーが突然、バスに乗るシーンが2ヵ所出てくる。1つは「現実からの逃避」、もう1つは「新たな旅立ち」を想起させた。だが、これに対してカレルは、「それも真意は分からない。もしかすると、ただ家に帰りたかっただけかも?」とニッコリ笑う。世界共通、こじらせ女子は、いろんな意味でミステリアスだ。(取材・文:坂田正樹)
映画『さよなら、退屈なレオニー』は全国順次公開中。