レギュラー化から半年 『有吉の壁』がゴールデンでも「お祭り騒ぎ」を可能にした理由
関連 :
■『有吉の壁』ならではのコラボとゲストの扱い方
「場所」から生まれる笑いもこの番組ならではだ。例えば、「水に落ちる」ネタの多いパンサー尾形やワタリ119などに考慮してか水場のある施設でのロケが多いが、芸人がどのようにネタを考えるのだろうか。
「水場はだいたい尾形さんが選ぶだろうとか、ほかの芸人さんが遠慮することもありますね(笑)。芸人さん同士、現場で事前に相談していたり、『ここだけ手伝ってもらえませんか』なんてこともよくあって、それでスベらされて『お前とはもう一緒にやんない!』とか(笑)。尾形さんとワタリ119さんなんて、あんなにケンカしているのに、結局いつも一緒にやっているんですよね(笑)」。
グループも所属事務所も超えたコラボには「友情」に似たものも見える。例えば、かが屋の加賀翔が体調不良で療養したり、ハナコ岡部がドラマで抜けたりするときには、そこを埋めるようにほかの芸人たちとコラボする姿が見られ、ちょっと胸が熱くなってしまう。
「ネタに関しても、誰と組むかも、こちらでは絶対に言わないんですよ。だから、賀屋くんも一人でも考えるし、一緒にやったほうが面白いと思ったらコラボする。岡部くんがドラマで出られない期間も、秋山くんも菊田くん2人でぜひ出たいと言ってくれました。一人ひとりが責任感と連帯感を持っているんですよね」。
また、有名人ゲストの扱いもこの番組ならではだ。ゲストは番宣に来て、「ただワイプでVTRを見るだけ」みたいなことを一切しない。あくまで笑いの一部なのだ。
「レギュラー初回でKing & Princeの平野紫耀さんに出演いただいたときも、ご本人登場だから事前に出演告知ができないし、出るのも1分半くらい。正直旨味はなさそうなんですが、そこは『出たい』と言って下さる方の心意気で、一緒に楽しんでいただいています。YouTubeで先出しさせていただいているオープニングで安村さんのところに原田龍二さんが出たいと連絡が来たり、Mr.パーカーJr.が好きだということで杏子さんが出演していただいたのも、『出たい』と言っていただけたから。
映画やドラマのPRがあるから『この人だよね』というのとは違うブッキングの仕方というのをご理解いただけていると思いますし、あくまで主役は芸人さんで、その軸は絶対にブレないようにしたいと思っています」。
■芸人たちを救う有吉の“切れ味”と佐藤栞里の“癒やし”的存在
また、番組の「楽しさ」を語る上で、アシスタントMCを務める佐藤栞里の存在はやはり欠かせない。
「栞里さんが一番すごいのは、とにかく楽しみに現場に来て、『楽しかった!』と終わっていくところです。(出演準備する芸人と)楽屋とかですれ違ってしまう可能性もあるので、栞里さんには素直に喜びを感じてもらえるよう、極力事前に見せないようにしています。有吉さんがバツを出しても、栞里さんだけは笑ってくれてるんです。栞里さんがいることが、芸人さんたちにとっては救いであり、女神。朝から晩まで過酷な収録にずっと笑顔で付き合ってくれるのはありがたいです」。
なかには、伝わりにくい難しいネタもある。例えば、「なりきりの壁を越えろ!」の米米CLUBネタで、ご本人登場として芸人・ライスが出たり、嵐の「Monster」で、池谷直樹が「モンスターボックス」(『筋肉番付』の跳び箱)を披露したり。有吉が拾ってくれることで成立しているネタも多いのではないだろうか。
「『モンスターボックス』の回答速度は、僕らもビックリしました。僕らは一切誰が出るか伝えていないんですが、有吉さんの切れ味があるからこそ、芸人さんたちも喜ぶんですよね。aikoさんの歌でご本人に(元プロ野球選手)愛甲猛さんが出てくるのも、子どもには全く意味わからない。あれも大久保(佳代子)さんのたっての願いでした(笑)」。
『有吉の壁』で若手・中堅芸人を育成する有吉の姿に、かつて彼が出演していた『内村プロデュース』(テレビ朝日系)を重ねて観る人も多いだろう。自身も苦労を経験しているだけに、芸人たちへの熱い思いがそうさせるのか。
一番象徴的だったのは4月8日に『有吉の壁』がスタートしたとき、有吉がツイッターで番組告知とともに、自身が『内村プロデュース』(『内P』)でやっていたキャラクターの「ネコ男爵」写真を添えていたことだろうか。ちょうど20年前の2000年4月8日は『内P』がスタートした日だった。有吉が『中堅も若手もぜひ呼んでほしい』と言うのは、そうした思いもあるのかもしれない。
自身のツイッターでは収録数日前から「楽しみ」とつぶやくこともある有吉。芸人を育てる狙いとともに、自身の癒やしにもなっているのだろうか。
「そう思っていただけたら、すごくありがたいです。朝6時から夜10時というスケジュールの日もザラにある中、MCが毎週1日フルでやって下さるのはなかなかないことですから、本当にありがたいです」。
最後に、番組ファンの方に向けて、横澤Pからこんなメッセージをいただいた。
「『有吉の壁』は、キラキラしたスターも出てこないし、ビックリするほど低予算な小道具で笑いをとろうとする番組です。でも、面白いことをやろうという心意気だけはみんなが持っていますので、下ネタも多めですが、温かい目でご支持いただければと思います」。(取材・文:田幸和歌子)
『有吉の壁』は日本テレビ系で毎週水曜19時放送。30日は『有吉の壁 ギャラクシーの壁を越えろ!2時間SP』を放送する。
■『有吉の壁~2時間SP』横澤Pコメント
「皆さんが大好きなサマーランドでの一般人の壁企画と、5月にご好評いただいた、壁芸人が架空の俳優や女優になりきってスピーチする『カベデミー賞』の第2弾をやります。あれは事前に質問が何も用意されていない、芸人さんたちが一番地獄のような顔をする企画で、またやると伝えたら、皆さん震えあがっていました(笑)。前回のOAは30分くらいでしたが、今度はコロナの状況もあるので、距離をしっかりとって前回より遙かに広いセルリアンタワーで大掛かりにやります(笑)。ブレイク芸人選手権では、KOUGU維新の新しい展開もありますので、お楽しみに」。