『ディア・エヴァン・ハンセン』俳優が語る“不安との戦い方” そして“乗り越えるべきこと”
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第71回トニー賞6部門受賞ほか、名だたる賞を次々と受賞したブロードウェイ・ミュージカルの傑作『ディア・エヴァン・ハンセン』が、映画になって登場。舞台版に続き主人公エヴァン・ハンセンを演じるベン・プラットと、アラナ役に抜てきされたアマンドラ・ステンバーグに、映画版の見どころから実生活での不安との戦い方まで、幅広くインタビューを行った。
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本作は1通の手紙と“思いやりの嘘”をきっかけに、エヴァンが人とのつながりや<本当の自分>に気づくまでの過程を描く、希望に満ちたミュージカル。物語を彩る数々の音楽は、『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』の名コンビ、ベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが担当し、観る者を感動へと導く。
●舞台版との違い
友達がおらず、家族にも心を開くことができない主人公のエヴァン。孤独を抱えるエヴァンの役作りについて、「表現としてはソフトになったよ」と、ベンは舞台版との違いを明かす。「舞台とは違い、リアルな寝室や校舎の中をごく普通に歩いて演じることになる。その結果 より自然に内面を表現できたと思う。つまり、映画版の場合は舞台に比べて抑えめの演技になるんだ。抑えた演技でも十分に伝わるんだよ」と説明する。
映画『ディア・エヴァン・ハンセン』
(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
一方、エヴァンと共に、亡くなった同級生コナーの名を冠した基金を立ち上げるアラナ役のアマンドラは、「舞台版のファンは、アラナの悩みをより深く理解できるようになるわ」とコメント。ベンも、舞台版から大きく発展した部分として、「映画版ではエヴァンとアラナの友情について、いろんな角度からの説明がある。物語の終盤でアラナがああいう行動を取る理由も、2人がお互いを傷つける理由も分かる」と語る通り、映画ではアラナのキャラクターがより深く掘り下げられている点も見どころだ。
●実生活において不安と戦う方法
エヴァンとアラナが劇中でそれぞれに深い孤独を抱えているように、本作ではメンタルヘルスケアも大きなテーマとして浮かび上がる。エンタメの最前線で働く2人は、日常の不安とどう向き合っているのだろうか。
まずはアマンドラが、「いい呼吸法があるのよ。それに薬も飲んでる。実はアラナと同じ薬で容量も同じなの。面白いでしょ。私には大事な“ツール”よ。それからセラピーにも通っているわ」と告白。続いてベンは、「僕もセラピーに通っているし、不安を解消するための薬を飲んでる。それから僕にとっては音楽も大事な存在だ。音楽を作ったり歌ったりすることや、音楽に合わせて踊ったり走ることは、まるで魔法のように精神状態を変える力がある。心が停滞している状態から抜け出すこともできるんだ。それから僕のパートナーも不安から救ってくれる」と明かした。
2015年の初演からエヴァンを演じ続けているベンは、どのような影響を受けたのだろうか。「僕はエヴァンほど人づきあいが苦手じゃないが、いろんな恐れを持ってる」というベン。そして次のように語った。
映画『ディア・エヴァン・ハンセン』
(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
「争い事は嫌いで、引っ込み思案なところがあり、他人に心の内を打ち明けることが苦手だ。そういう会話の気まずさや痛みに耐えられないんだ。でも、それはいつか越えるべき壁なんだよ。エヴァンが自分を愛せない原因の1つでもある。彼は自分をさらけ出すことを怖がりすぎていると思う。それをエヴァンとして何年も繰り返し体験することで、僕自身が変わってきた気がする。僕らは勇気を出して壁を破り、居心地の悪さや痛みに耐えて突き進む必要がある。そこを抜けないとつながりや理解は得られない。快適と感じる場所から抜け出す必要性を学んだよ」。
優しさからついた嘘が思わぬ形で発展していき、やがて今まで逃げてきた自分の内面の課題と向き合うことになるエヴァン。真実や自分の本当の気持ちを大切な相手に伝えようと葛藤する姿は、物語を通して多くの人に勇気を与えることだろう。
映画『ディア・エヴァン・ハンセン』は公開中。