カンヌ2冠『ベイビー・ブローカー』是枝裕和監督、凱旋! 最優秀男優賞ソン・ガンホとの絆を語る
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第75回カンヌ国際映画祭で2冠を獲得した映画『ベイビー・ブローカー』の是枝裕和監督が6月13日、凱旋記者会見。最優秀男優賞のソン・ガンホについて「最後の最後まで一緒に走ってくれました」と強い信頼と絆を語った。
【写真】『ベイビー・ブローカー』是枝裕和監督、凱旋記者会見の模様
本作は“赤ちゃんポスト”に預けられた赤ん坊をめぐり出会っていく人々が描かれるヒューマンドラマ。第75回カンヌ国際映画祭では、主演のソン・ガンホが韓国人俳優初となる最優秀男優賞を受賞。エキュメニカル審査員賞も受賞し、合わせて2冠の快挙を成し遂げた。
このたび、カンヌ後に韓国でのプロモーションと6月8日の韓国公開初日を迎えた是枝監督の、日本帰国後初の公の場となる凱旋記者会見を実施。
まずはカンヌでのソン・ガンホの最優秀男優賞の受賞について問われると「ソン・ガンホの名前が呼ばれた瞬間に、『この作品にとって最高のゴールなんだな』と思いました。その夜にパク・チャヌク(『Decision to Leave』で監督賞受賞)のチームと合同でお祝いをしたんですが、みんな幸せな夜でした。役者が褒められるのが一番嬉しいんですよね。柳楽(優弥/是枝監督の『誰も知らない』で最優秀男優賞を受賞)くんがもらったときは、柳楽くんはもう日本に帰っていて、僕だけしかいなかったので、受賞した役者さんとあの場所で抱き合って、称え合って…というのは初めてだったので、特別な夜になりました」と喜びを口にした。
一方で「パク・チャヌクさん、ポン・ジュノさん、イ・チャンドンさん…どの監督で獲ってもおかしくなかったと思うので、むしろ申し訳ないというか、僕が監督したタイミングで受賞というのは作品にとってはよかったですし、幸せですけど、韓国の監督にとっては『僕らのソン・ガンホ!』という思いがどこかにあるんじゃないかと思うので…(笑)」と韓国の映画人への気遣いも。
カンヌから韓国へと凱旋を果たした際の様子について「空港が揺れていました。職員の人が職場を離れて付いてきちゃって『大丈夫なのかな?』ってくらい、ザワザワっとみんなが付いてきて、出口を出たところでファンの方たちが待ち構えていて…。国民的スターがカンヌの映画祭で韓国人初の男優賞を獲るというのは、オリンピックの金メダル以上なんだなというのはわかりました」と現地の熱狂について明かした。
韓国では初登場第1位というロケットスタートを切り、「熱狂的な状況で、叫び声がずっと聞こえている感じでした。感想を聞くって感じじゃないんですけど(笑)、観た方の反応はたぶん悪くないと思います」と手応えを口に。
韓国のプロダクションでの映画制作について「僕の演出のアプローチの仕方は基本的に日本と変わらないアプローチでやらせていただいて、そこは我を通した部分もあります。韓国はアメリカのやり方を現場で導入しているので、脚本はクランクイン前にすべて完成させて、ストーリーボードも全て書いて…ということまでしないとインしないという雰囲気だったんですが、現場で作っていくやり方を通したので、そのへんは僕自身は楽でした」と振り返った。
そして改めてソン・ガンホとの共同作業について、「本当に楽しい人なんですよ。その場にいると、みんながニコニコしちゃう。クランクイン前にポン・ジュノとご飯を食べて、彼のオフィスに遊びに行ったら『いろいろ不安はあると思うけど、ソン・ガンホが現場に来たら、全てが彼のペースで進んでいくから何も心配いらない』と言われて、本当にその通りでした」とコメント。
「予定よりも早く、現場に来て『昨日、つないだものが見れるなら見せてくれ』と言ってそこで自分の芝居だけでなくつないだものを全部見て、その上で、基本的に全てほめてくれるんですけど『最高だったけど、僕のセリフ、いま使っているテイクじゃない、2つくらい前に言ったのがあると思う。おそらく監督が切り取ったところだけだと、セリフにニュアンスまでは伝わらないかもしれないから、もう一度、比べてみてくれ。最終的な判断は監督に任せるけど、ぜひ比べてみてほしい』というやりとりを毎日やってくれて、それはすごく助かりました」と振り返る。
さらに「彼はテイクごとに違うので、それを僕がどこまで追えてるか? 言葉はわからないので、それを補ってくれているのかなと思いました。自分の芝居に対する基準がかなり高いんです。頼りになりました。最終日の前くらいに『いま言うことじゃないけど、編集で僕のセリフがひとつ、実は途中で切った方が余韻が残っていいと思うから、間に合えば確認してくれ』と言われまして、それは切りました。それは結果的に本当によかったです。最後の最後まで一緒に走ってくれました」と明かした。
また、キャスト陣からの反応については「出来上がった後、ソン・ガンホさんが『これは命を巡る話だ』とメイキングのインタビューで口にしていて、あぁ、そうだなと思いました。家族の話ではなく、もうひとつ“先”にある命を巡る話なんだという捉え方をされてて、そういう言葉で自分が『そうだな』と気づくことはありますね」と語っていた。
映画『ベイビー・ブローカー』は、6月24日より全国公開。