『オッペンハイマー』クリストファー・ノーラン監督×『ゴジラ-1.0』山崎貴監督の対談実現! 映像到着
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■トラウデン直美(モデル、タレント)
この映画は衝撃の連続でした。天才の見ている世界はこうなっているのか、と思わせる美しい映像と音楽の世界観に。歴史の大きな波と人々の思惑が重なり合ったストーリーの重厚さに。世界を変える未知の技術への興奮とその影響力への恐れは、開発者の手を離れたが最後、それらの運命を決めることはできないのでしょう。
人間は知的好奇心を抑え込むことはできない、そして新たな技術を必ずしも望ましい形で利用できるとは限らない。技術の進歩著しい今に生きる私たちに過去の天才達はどんなメッセージを残すのか想像せずにはいられません。
そして、被爆国日本に住む私たちはこの映画から何を感じ、どんなメッセージを世界に伝えられるのでしょうか。
■平岡敬(元広島市長)
オッペンハイマーは英雄ではなく、矛盾に満ちた人間である。科学者の研究成果が、国家によって殺人兵器に利用されたため、彼は道義的責任に苦しむことになった。彼が感じた世界の破滅への危惧は、いま現実となってわたしたちの世界を覆っている。核の脅威を秘匿する危険性を訴えたために、彼は赤狩りの標的になった。その頃の空気は今の時代にも満ちている。そして足を踏み鳴らして、彼を英雄として迎える研究所員の姿は、民衆が国家にからめとられる状況を暗示しているようだ。それゆえ、もう一度観て、核抑止力を信奉する国家とは何か、を考えたい。
■細木信宏(NY在住映画ライター)
数奇な理論物理学者ロバート・オッペンンハイマーに聞こえていた発明の漣(さざなみ)は、想像し難い原爆という全てを飲み込む大波となり、歴史という海原を超えて我々の魂にこだまし、放射能という戦争が生んだ深い痕跡を残してゆく。忘れられない傑作。
■平井伊都子(LA在住映画ライター)
世紀の発見が人類の未来を永遠に変えたばかりか、国にも見放された男の混乱と苦悩をかつてない映画的表現で描き、観客を物語に没入させる。オッペンハイマーの原爆開発を美化するのではなく、想像の範疇を超えた悲劇と後悔に苛まれた研究者の運命を描く“反戦映画”。
■落合陽一(計算機科学者)
マンハッタン計画を時系列で捉えると単調な人間讃歌になる.予期はできたが予期せぬ結果,その利用と称賛,自己批判,これは研究者当人以外には理解し難い内的葛藤がある.その内的葛藤に切り込んだストーリーを時系列を絡み合わせて提示することで作品としての旨みが作り込まれている.難解か?そんなことはない.何より単純に原子爆弾の圧倒的エネルギーの暴力性が音と光で満ち溢れ,我々の脳裏に様々なカタルシス,畏怖や悲しみを想起させる.
■アーサー・ビナード(詩人、絵本作家)
物理学をここまでスリリングに描いた映画は前代未聞だ。しかも極秘の開発プロジェクトの内部を、インサイダーの視点でぼくらに見せてくれる。見事なセリフの刺激は絶えず脳を覚醒する。人類初の核兵器を作ったオッペンハイマーたちこそ、最初のヒバクシャにもなったことが、身にしみる。