山崎豊子さん原作『大地の子』、舞台化決定 主演は井上芳雄、奈緒・上白石萌歌ら出演へ
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■脚本:マキノノゾミ
『大地の子』がTVドラマとして放送されたのが30年前だと改めて知って、そんなに経っていたのかという驚きを禁じ得ません。何となく、ついこの間のドラマのような気がしていました。
山崎豊子さんの原作小説の連載が始まったのがそれよりも8年前で、ですから「物語における現在の時制」は1985年となっています。1985年! 戦後40年の年です。つまりは、そういうことなのです。日本が戦争に負けて、中国で孤児となった主人公の陸一心が懸命に生きたのと同じ時間が、あれからすでに経っているのです。
この作品を、今、舞台化することの意味は、そこに尽きるように思います。
「未来志向」などという麗句の陰で、忘れてはいけないことをどんどん積極的に忘れてゆきたがる流れの中で、わたしたちは折に触れて、このような作品と向き合わなければならないということです。
■演出:栗山民也
舞台に残しておきたい作品がいくつかある。これはその一つで、いつか必ずと願っていた忘れてはならない歴史の一章である。山崎豊子さんの作品について詳しい読者ではなかったが、この「大地の子」だけは違った。中国の話が話題に出ると、頭の中にその物語のどこかの一風景がいつも勝手に現れた。それほどに黄色っぽい大地の上、そこを歩む幾多の人間たちの様々な光景が鮮烈に思い浮かぶ。
素敵な俳優たちが揃った。そのみんなと大事な歴史を、大事に描こうと思う。何でこんなことが起きてしまったのか、そのことを出発点として。
■陸一心(ルー・イーシン)役:井上芳雄
原作本も繰り返し読み、ドラマも拝見していたので、最初お話を伺った時は、「こんな名作の舞台化に関われるなんて!」と夢のようで本当にびっくりしました。演劇として、過去の歴史を自分たちのこととして現代のお客様に伝えることができる作品なのでプレッシャーはありますが、栗山さんはじめスタッフ・キャストの皆さんと丁寧に作り上げていきたいと決意を固めています。
人間の可能性、思い、愛情の強さとその奇跡を描いている物語です。是非たくさんのお客様に観ていただいて、共有できますように。全力でお届けします!