『バースデー・ワンダーランド』原恵一監督が自分の殻を破った3つの初挑戦

“大人が泣けるアニメーションの巨匠“と言われる原恵一監督の最新作にして、女優の松岡茉優が声優初主演を務めるアニメ映画『バースデー・ワンダーランド』について、原監督が自身の殻を破って行った“3つの初挑戦”を語った。
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■(1)現代の女の子が主人公だということ
『バースデー・ワンダーランド』場面写真 (C)柏葉幸子・講談社/2019「バースデ・ワンダーランド」製作委員会
本作の主人公は自分に自信がない女の子アカネ。アカネはスマホが普及した現代で、友達付き合いに悩み、誰かの意見に流されてしまうような内気な子だ。監督の作品では、『クレヨンしんちゃん』シリーズや『河童のクゥと夏休み』など男の子を主人公にすることが多く、現代の女の子を主人公にすることは初めてのこと。
原監督は「友達グループやクラスでの自分の立ち位置とかを考えすぎてしまうのが現代の女の子だと思います。だからアカネもそういう普通の女の子にしました。アカネは友達が仲間外れにされそうになっても助ける勇気が出なかったり、自分がハブられるのが怖かったりしますが、実際にそういう女の子は多いはず。ワンダーランドの冒険を通じて少しでも成長し、アカネの中で何かが変わるということを描きたかったんです」と、現代の女の子を主人公にした理由を明かしている。
■(2)海外を参考に世界観を作ったこと
『バースデー・ワンダーランド』場面写真 (C)柏葉幸子・講談社/2019「バースデ・ワンダーランド」製作委員会
『カラフル』で東京都の二子玉川や世田谷区の等々力、『河童のクゥと夏休み』で東久留米市など、原監督は過去作品において実在する日本の都市を劇中の舞台にすることが多かった。
しかし、本作では初めてアメリカやヨーロッパなど海外の絶景をモデルにしたという。アカネが冒険するワンダーランドの世界は、カラフルで見たことがない不思議な動物や景色に溢れている場所だが、岩でできた洞窟住居が“異世界”と言われるイタリアのマテーラ、オレンジ色の波が流れるように美しく“奇跡の絶景”と呼ばれるアメリカのウェーブ、何色もの層でできた“SNS時代の新名所”と注目されるペルーのレインボーマウンテン、そして青い美しい水が流れる静岡県の“パワースポット”である柿田川がそのモデルとなった。
原監督は「本作では、日本人になじみのない場所を取り入れ、カラフルなワンダーランドの世界を作りたいと思いました。ビジュアルを担当したイリヤ・クブシノブもロシア出身ということもあり、建物や風景には東ヨーロッパの要素を意識しました」と語る。加えて、「アカネがいる世界は二子玉川をモデルにしているので、ワンダーランドの世界との対比で、よりファンタジーな世界観ができたと思います」と、自身の試みに胸を張っている。