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『風の電話』諏訪敦彦監督、コロナ禍で「これから何ができるのか、どう表現するか」 Webティーチイン開催

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「ミニシアターと映画 コロナ以前/以後を考える」をテーマにWebティーチインを行った諏訪敦彦監督
「ミニシアターと映画 コロナ以前/以後を考える」をテーマにWebティーチインを行った諏訪敦彦監督 クランクイン!

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 第70回ベルリン国際映画祭のジェネレーション部門で国際審査員特別賞を受賞した映画『風の電話』の特別先行配信を記念して、諏訪敦彦監督によるwebティーチインが行われた。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言、外出自粛要請が出るなか、オンラインによるティーチインには約60名が参加。「ミニシアターと映画 コロナ以前/以後を考える」をテーマに、諏訪監督が参加者からの質問にリアルタイムで答えた。

【関連】映画『風の電話』クランクイン!ビデオにて先行配信中!

 映画『風の電話』は、2011年に岩手県大槌町在住のガーデンデザイナー・佐々木格氏が、東日本大震災で死別した従兄弟ともう一度話したいという思いから自宅の庭に設置した<風の電話>をモチーフとした初の映像作品。

 一人の少女が広島から故郷の岩手に帰り、<風の電話>にたどり着くまでの道程を通し、傷ついた心の救済や、人々が忘れかけている大切なものをテーマに描いたロードムービーで、主人公ハルをモトーラ世理奈が演じるほか、西島秀俊、西田敏行、三浦友和ら実力派俳優が共演。1月に公開された本作は、本来であれば現在も劇場で上映中であったが、映画館の休館に伴い、動画配信サービス「クランクイン!ビデオ」「Paravi(パラビ)」にて特別先行配信中だ。

■ミニシアター存続の危機を救いたい

 Webティーチインでは、まず諏訪監督が発起人の一人でもあるSAVE the CINEMAの活動について口を開く。「ミニシアターという場の意義、存在が途切れてしまってはいけないと業界が一丸となって、対応したスピード感はこれまでにないものでした。今まで僕たちの世代が働きかけてこなかったツケが回ってきたと感じる一方、声を上げることが無駄でないと実感しています。また深田(晃司)監督、濱口(竜介)監督が立ち上げたミニシアターエイドが、3日間で1億円を到達したことも世界的にも稀なことです。小規模の作品の多様性を意識的に守っていかないと、一度失われてからでは戻ってきません。また、観客と同時に今後私たち映画を作っている側も変わっていかないとと思う日々です」と語った。

■諏訪監督と参加者の熱を帯びたディスカッション

ーーコロナ禍を映画で描きたいと思いますか?

諏訪監督:コロナ禍以前と以後で世界が大きく変わったしまったと感じます。本作に関して言えば、ハルは世界から心を閉ざしてなんとか生きている女の子ですが、何かに触れることで世界とギリギリでつながっています。それは伯母さんとのハグであったり、公平に手を洗われたりする瞬間ですが、今は誰かと触れ合うということができません。世界は全く新しい状況となったので、これから何ができるのか、どう表現するかは常に考えていますし、この経験を踏まえなければ、という感覚はあります。

ーーベルリン国際映画祭に関して

諏訪監督:観客がハルを家族のように受け入れてくれたのが印象的でした。地震も津波も日本ほど身近ではないけれど、ハルがみんなの中に本当に存在しているようでした。また難民問題や失われた家族といった点に多く共感をいただきました。日本とは違い政治的発言を恐れない姿勢を現地の高校生記者たちから感じました。民主主義の責任として一人一人が発言しなければと改めて思います。私が若者だった湾岸戦争の時、反発もできず、何もしようともしなかった。だから今の若者に声をあげろと言えた義理じゃないけれど、改めて行動することの重大さを感じています。

ーー即興演技に対する俳優との関わり方について

諏訪監督:俳優に左右されたいと思っています。ハルはモトーラ世理奈であり、他の人が演じたら他のハルになっていました。俳優がその人であることによってそこにいるので、他の人では同じハルを演じることができないと思います。また西島さんも絶賛したようにモトーラさんの演技には嘘がありません。彼女には嘘をついているという実感がなく、その現実の場所の風や匂いに率直にリアクションしているからこそなんだと思いますし、彼女を撮っていれば映画になると思いました。彼女の表情の中にすべてがある、と思えたのです。

ーーロードムービーをまた撮りたいですか?

諏訪監督:今回初めてロードムービーを撮りましたが、毎回小さな別れを繰り返していくのが本当に寂しいんです。日々、ハルと一緒に出会っては別れていく。特に山本未來さんの演じる妊婦さんとは、ハルにいつかそうなるかもしれない女性として出会って欲しかった。映画の中で太陽のような輝きを持つシーンにしたかったのです。

いい人たちばかりに出会いますが、現実はそうはいかないでしょう。だからこの旅はファンタジーなのかもしれませんが、ハルもまた現実の人間ではありません。本当に家族を失って一人になってしまった子は、現実ではその悲しみを隠して日常を生きているかもしれません。でもきっとハルのよう存在を心のどこかに抱えているはず。ハルはその象徴なのだと思います。

ーー日本の映画館の現状について

諏訪監督:日本では年間約1300本もの作品が公開されています。これは世界屈指の数です。でも全体のスクリーンの約12%がミニシアターで、ここでほぼ1000本の映画が上映されているのが現状です。もしミニシアターがなくなったら300本の大きい規模の映画しか上映されなくなってしまう。多様な世界と出会う場所として映画館を残したいです。

 最後に諏訪監督は、「今回のコロナ禍を経て、映画館で映画を観るということがより貴重な体験になるとも思っています。映画館という場所はなくならないし、果たしてくれる役割が大きくなっていくという希望も持っています」と映画館への思いを込めた。

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