
小沢昭一
小沢昭一 出演映画作品
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幕末太陽傳〈デジタル修復版〉
制作年:2011年12月23日(金)公開
『洲崎パラダイス 赤信号』『女は二度生まれる』など数々の名作を世に送り出した川島雄三監督の代表作を、日活が創立100周年を記念してデジタル修復。今から50年以上前に撮影された日本映画史に残る名作を最高の映像で上映する。川島監督の軽妙洒脱な演出と、お調子者だがどこか陰のある主人公の佐平次に扮すフランキー堺の名演が印象深い。
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かあちゃん〈2001年〉
制作年:2001年11月10日(土)公開
市川崑監督が岸惠子と8度目のタッグを組んだ、意欲あふれる人情時代劇。セピアとカラーの中間をいく独特の色彩で、長屋で暮らす子だくさん女性の“誇り”をカラリと謳いあげていく。
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梟の城
制作年:1999年10月30日(土)公開
今は亡き司馬遼太郎の小説をエンターテインメント性豊かに映画化。中井貴一扮する伊賀忍者の秀吉暗殺計画をタテ軸に、男同士の宿命の対決や恋のエピソードが絡み合っていく。
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カンゾー先生
制作年:1998年10月17日(土)公開
坂口安吾の小説『肝臓先生』をベースに、町医者の日常を描いた大らかな人間ドラマ。人間くさい主人公を、「うなぎ」に続く今村作品への出演となる柄本明が、ユーモラスに妙演。
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うなぎ
制作年:1997年05月24日(土)公開
1997年度カンヌ映画祭で見事グランプリに当たるパルム・ドールを獲得。「黒い雨」以来、8年の空白を経て、ベテラン今村昌平が発表した人間ドラマ。吉村昭の小説『闇にひらめく』を原作に、飼っているウナギにしか心を開かない男の心情の移ろいを見極めようとしている。浮気した妻を殺害し、8年の服役の後、仮出所した男・山下拓郎。理髪店を開き、自戒の日々を送る彼は周囲の人々に心を開くことはなかった。そんなある日、山下は自殺未遂の女性・桂子と出会い、彼女の希望から共同生活を始めることになる。彼女の優しい人柄にふれ、打ち解けていく山下だったが、そんな彼の前にかつての囚人仲間が、さらに桂子の夫までもが現れる……。静かな語り口ながら、鋭い人間観察の目が随所に光る佳作。とぼけた笑いも盛り込まれ、今村の初期作品を思わせる仕上がりとなった。役者陣もそろって好演を見せるが、特に桂子の母親役の市原悦子が怪演を披露して印象的。
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続・社長えんま帖
制作年:
マルボー化粧品社長の大高長太郎は、ライバル・椿堂に水をあけ、海外市場にも手を拡げる勢い。そんな時、長太郎に親会社の社長就任の命令が下った。社内では未曾有の大人事異動で大わらわ。後任は西条企画宣伝部長を任命した。
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鉄火場破り
制作年:
黄金の腕ゆえに苦悩する稀代の壷振り親子の半生を中心に、場面の大半を白熱する鉄火場シーンと息づまるアクションで埋めつくした娯楽大作。父の敵“カミソリの龍“を演じる山茶花究が好演。高品格も脇役ながら、シブ味のある演技を披露。
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おはなはん・第一部/第二部
制作年:
勝気な女・はなが、明治・大正・昭和と時代の波にのまれながら、はつらつと生きていく姿を描いた人気TVドラマを映画化した作品。原作は実話にもとづいた小野田勇・林謙一の『おはなはん一代記』で、山田洋次が脚色している。TV人気のあおりで大ヒットした。
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炭鉱〈ヤマ〉に生きる
制作年:
【炭鉱の歴史に迫る、人間ドキュメント】 日本の近代化を支え続けながら石油の登場と共に消え入った炭鉱について振り返るドキュメント。炭鉱画を描き続けたひとりの坑夫の肖像をたどりながら、かつての生活を見つめる。炭鉱の町で生きた人々と当時の風景がよみがえる力作だ。
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釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束
制作年:
万年ヒラ社員のお調子者ハマちゃんと、ハマちゃんの釣りの弟子にして社長のスーさんのコンビが、ひと騒動やらかしてくれます!今作はシリーズ開始から20年目にして通算20本目となる記念すべき作品。西田敏行と三國連太郎の黄金コンビの息の合った掛け合いはもちろんのこと、ゲストとして『武士の一分』で映画デビューを果たした壇れいが登場するのも見逃せない。
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フランキー・ブーチャンの殴り込み落下傘部隊
制作年:
フランキー堺と“ブーチャン“こと市村俊幸のコンビによる“軍艦旗“もの第3作。ドジでマヌケな門馬三太郎と間々田伍作は、落下傘部隊へ転属となり、相変わらず失敗を繰り返すが、ひょんなことから大手柄を立てる。フランキー堺はこの作品を最後に日活を退社し東宝へ移った。
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逢いたくて逢いたくて
制作年:
部長が授業料に窮して楽器を質入れ、運営も行き詰まってしまった某大学サークル。部員の道子は部の再建のため偶然催された“園まりそっくりショー“に応募、見事優勝して賞金をせしめる。だが、本物の園まりが病気で声が出なくなったことから道子にその代役が回ってきて……。歌手の園まりが二役を演じる青春歌謡もの。
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あひるのうたがきこえてくるよ。
制作年:
野田知佑の原案による椎名誠の短編小説『アヒルの飼育』を、山村の美しい自然の景観をバックに映画化。都市生活に疲れた男が、旅の途中に出会った3匹のアヒルの子を従え、湖畔にテントを張ってキャンプ生活を始める。村人との交流も始まり、小事件が起こる。やがてアヒルの子が湖に巣立つ時、男もまた思い出を残して旅立つ。“コンバットツアー“と称する地方巡業風の映画興行が、前作「うみ・そら・さんごのいいつたえ」に続いて成功した。DVDは「ホネ・フィルム式活動寫眞全記録 椎名誠 DVD-BOX」に収録。
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砂の上のロビンソン
制作年:
1年間、理想的家族としてモデルハウスで生活すれば、その家が自分たちの物になるという不動産会社のキャンペーンに乗ってモニターとなったサラリーマン家庭が、衆人の目にさらされ、マスコミに利用されて、異常な事態に巻き込まれていくという悲喜劇。「マルサの女」などで脇役として異彩を放っていた大地康雄の本格的初主演作。
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駿河遊侠伝 度胸がらす
制作年:
清水港の親分になった次郎長は男っぷりと度胸の良さで貫禄十分、次第に子分も増えてきた。ある時、大恩を受けた五郎親分の死を知り、単身甲州に乗り込み、仇を討つが同時に深でを負ってしまう……。任侠時代劇の人気シリーズで、“次郎長“ものの第2作。
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エデンの海〈1963年〉
制作年:
瀬戸内海に臨む女子高に、東京から青年教師・南条がやって来た。彼の明るい人柄はたちまち生徒たちの人気を集めるが、勝気な少女・巴だけは彼に反抗的。しかし、いつしか二人の間には、師弟愛以上の想いが芽ばえていく。西河克己監督は、後年、山口百恵の主演で同作をリメイクしている。
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サラリーマン悪党術
制作年:
元学生運動闘士の伊達は広告会社に勤務しているが、出世の道も望めぬ身。妻もすでに彼への期待を捨てている。そんな伊達の楽しみといえば、大阪出張の折に出張費を浮かして支社の里美に会うこと。ところが、里美が伊達夫婦の隣室に引っ越してきて……。風刺喜劇に異彩を放つ須川監督のサラリーマン・コメディ。
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フランキー・ブーチャンのあゝ軍艦旗
制作年:
「フランキーの牛乳屋」のコンビ、フランキー堺と市村俊幸に、新人・大泉滉が加わって繰り広げる珍無類な水兵物語。口の早い江戸っ子で要領のよいフランキーと、田舎者でいつも損な役まわりの市村の対照が面白く、春原監督得意の爆笑編となった。
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痴人の愛〈1967年〉
制作年:
谷崎潤一郎の同名原作を、女を描くことには定評のある増村保造が監督した3度目の映画化。ふと知り会った少女ナオミを自分の思いどおりの女に育て上げようとする譲二と、その肉体に磨きをかけやがて譲二を征服するナオミの逆転劇を、緊張感あふれる演出で描く。安田(現・大楠)道代が新しいナオミ像を生き生きと演じている。
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日本一の裏切り男
制作年:
早坂暁・佐々木守の名シナリオライターがコンビを組み、シリーズ6作目にして監督も須川栄三に代わった。特攻隊員として玉砕したはずの日の本太郎は日本を裏切って生き残り、戦後の荒廃から高度成長の時代へと、しぶとく裏切りを続けながらのし上がる。
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浮草の宿
制作年:
当時の日活の新人スター、二谷英明を鈴木清太郎(現・清順)が演出したB級アクション。本編は殺人の濡れ衣を着せられたヤクザが、5年後に真犯人を求めて横浜に帰ってくるといったハードボイルドと、春日八郎のヒット曲を素材とする歌謡映画という二つの顔を持つ。春日の役は流しの歌手、その正体は正義の税関吏だ。
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早射ち犬
制作年:
鴨井大介は、ギター片手にその日暮らしの気ままな生活を送っていた。そんな時、同じアパートの運転手・五郎が現金強奪事件のぬれぎぬを着せられる。大介は、さっそく顔なじみの刑事と捜査を開始。新興宗教の天心精霊会が黒幕であることを突き止める。
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武器なき斗い
制作年:
貧乏人の子だくさんで苦しむ労働者に、性教育、産児制限法を講じ、やがて大学教授から衆議院議員に当選した山本宣治の半生を描いた社会派ドラマ。1960年、安保で揺れる日本で革命志向の映画としてもてはやされた。右翼の凶刃に倒れた主人公の凄絶な半生が見もの。
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銀座旋風児・目撃者は彼奴だ
制作年:
庶民経済会の前会長謀殺事件を追っていた刑事がある夜殺される。目撃者は銀座旋風児の二階堂卓也とサラリーマンの小山田。警察は小山田を犯人として捕まえるが、卓也は事件の鍵は猟銃にあるとにらみ、東京中の銃砲店を歩いて回るのだった。
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ブラック・コメディ ああ!馬鹿
制作年:
出世第一主義のサラリーマンのなれの果てを風刺たっぷりの笑いにくるめた異色喜劇。係長の赤沢が結婚を申し込んでふられたタイピストは常務の2号だ。ところがこの娘が食わせ者。常務の目を盗んで大学生とねんごろになるわ、狂言自殺はするわ。結局、赤沢は常務から彼女を押しつけられる。出世のためと、この厄介者の処理に彼は奔走するが……。
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鉄砲犬
制作年:
拳銃の入ったボストン・バッグを置き引きにスラれてしまった大介。だが懐の30万円は無事だったのでひと安心。ところがその拳銃が、都会の悪を牛耳る新星会によって殺人に利用され、大介は警察に追われる身となる。真相を知る者は新星会によって次々と消され、大介は窮地に立たされるが……。
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波止場の無法者
制作年:
海を捨て、陸で堅気になって働こうと決心した木島だが、飲み屋ではからずもケンカに巻き込まれる。キャバレーのマスターに気に入られた木島は用心棒として店につくことに。しかし、その店は香港の麻薬王に狙われていた……。「ギターを持った渡り鳥」の小林旭・斎藤武市コンビで贈るマドロスものアクション。
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狙撃
制作年:
永原秀一のオリジナル・シナリオによるハードボイルド映画の快作。一匹狼の殺し屋・松下徹は金塊密輸の手助けをするが、敵方の雇ったスゴ腕の殺し屋に仲間を殺されたうえ、恋人までも人質にとられ、ついに1対1の対決を挑む。病老の殺し屋に扮した森雅之が見事な風格を見せた。
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ザ・タイガース 世界はボクらを待っている
制作年:
アンドロメダ星の王女・シルビィは宇宙ドライブの途中、折しも公演中のザ・タイガースのサウンドの迫力に飛行不能となり日本劇場に不時着。ファンの波に巻き込まれ王女は失神したがジュリーに助けられる。王女を連れ戻そうとするアンドロメダ警察とザ・タイガースの攻防戦が繰り広げられる。
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拳銃0号
制作年:
アメリカ人の観光客が落とした一丁の拳銃が、屑屋から始まりギャング、スリ、尼そして最後は心中しようとする若いカップルと、幾人もの手を転々としていくという一種のオムニバス形式の意欲作。出演場面は少ないが、赤木圭一郎の本格的なデビュー作である。
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仇討
制作年:
武士道の重圧から逃れようとしてあがきながら、ついに果たせず死んでいく軽輩の侍・新八の姿を、彼の精神的な葛藤を中心に描いた時代劇の力作。播州の小藩、無役の武士・新八は武器庫点検のいさかいから上司を斬殺。彼は仇として上司の弟たちから次々と狙われる。ラストのダイナミックな大立ち回りは、錦之助の力演で迫力十分。
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五瓣の椿
制作年:
松竹が、というより日本が生んだ大作メロドラマの1本。人の良い父親が病気なのをいいことに、不義を重ねていた母親を憎む娘が、父の死後、身を挺して相手の男たちに近付き、次々と殺害しては、父が愛した椿の花を残して去る。岩下の熱演と川又の美しいカメラ・ワークが印象的。
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13号待避線より その護送車を狙え
制作年:
護送車が襲われ、囚人が即死、犯人は逃亡した。護送責任を問われた看守長の多門は、6ヵ月の停職処分を受け、単身犯人追及に動き出した。そしてすでに保釈処分になっている五郎を追い、熱海へ。しかし、そこでまた囚人の姉が殺されてしまう……。島田一男の原作を鈴木清順が映画化したアクション・ドラマ。
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果しなき欲望
制作年:
敗戦時、一人の軍医がひそかに埋めた時価6千万円のモルヒネ発掘をめぐって、軍医の旧部下と称する4人の男たちと、今は亡き軍医の妻と称する女が繰り広げる色欲と物欲のドラマ。そこに長門裕之が演じる失業青年が絡み、恋人の浮気を警戒しながらも、自分は妖艶な渡辺美佐子扮する志麻の誘惑に簡単に落ちてしまうところがおかしい。西村晃、小沢昭一など今村作品ではおなじみの芝居巧者が、作品を盛り立てている。今村監督はこの欲にとりつかれた亡者たちが自滅していく様を、粘り気のあるエネルギッシュな演出で描く。
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盗まれた欲情
制作年:
今東光原作の『テント劇場』を、今村昌平が第1回監督作品として映画化した風俗ドラマ。大阪は河内地方のドサまわり一座。大学出の文芸部員・岡田信吉は小難しい理論をたてにこの世界に飛び込んできたが、理想と現実のギャップはあまりにも大きかった……。今村昌平の演出には、新人にみられがちな緊張がみじんもみられず、ひとクセもふたクセもありそうな連中がのさばる、この人間のごった煮のような風俗ドラマを完璧に仕切り、すでに大家の風格さえ漂わせている。特に大騒ぎで村を去っていく旅役者の一座が画面狭しとひしめくラストシーンには、今村昌平の持ち味である土着のバイタリティーが見事に表われている。DVDは「今村昌平 日活作品全集(1)」に収録。
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にあんちゃん
制作年:
10歳の少女・安本末子の綴り方(=日記)の映画化。昭和28年の春、不景気に覆われた佐賀県の小さな炭鉱町を舞台に、父母のいない4人兄弟が、貧しくてもけなげに生きる姿を描いている。今村監督の演出は重厚なリアリズムで貫かれていて、観客の涙を誘うようなセンチメンタルな描写を回避している。現地ロケをいかして、炭鉱町に生きる人々の姿を鮮やかに捉えている。栄養失調になりながらも明るく元気な末子を演じる前田暁子をはじめ、子役たちの好演も印象深い。今村監督はこの作品で文部大臣賞を受賞したが、このような賞をもらってはいけないと自戒し、「豚と軍艦」を製作したという。
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男はつらいよ 寅次郎紙風船
制作年:
九州路の日田で知り合った若い娘・愛子に商売のサクラをつとめてもらった寅さん。病気で寝ている昔の仲間から自分が死んだら女房をもらってくれと言われてあたふた。帰京した寅のところへ彼女たちが現れて……。
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続・拝啓天皇陛下様
制作年:
北支戦線に招集されたお人好しの山口善助は民間からの献納犬・友春号の飼育係を命じられる。ある日、善助に元の飼い主・久留宮ヤエノから慰問袋が届く。やがて友春号は戦死、そして終戦。善助は友春号の死を知らせにヤエノの家へ行く……。善助の友人に扮する小沢昭一が中国人・王万林を怪演。DVDは「渥美清メモリアル 渥美清・もうひとつの世界」に収録。
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東京騎士隊
制作年:
前年の「くたばれ愚連隊」に続く、鈴木清順監督、和田浩治主演の第2作。父の急死で松原組三代目を継いだ高校生の孝次が、父の死に陰謀が絡んでいることを知り、真相を突き止める。和田浩治の若さにまかせたアクションが見られるが、主演を張るには貫祿不足。
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貸間あり
制作年:
喜劇映画に独特の作風を築いた川島雄三の監督作品。井伏鱒二の同名小説を原作とし、大阪のとあるアパートに住む風変わりな人間たちのエネルギッシュな群像を描く。川島の代表作「幕末太陽傳」の主役で名を上げたフランキー堺の怪演が見もの。
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ボクサー〈1977年〉
制作年:
足の悪い天馬は、チャンピオンになることを夢見てジムに通っているが、初試合に敗れたためジムは彼を見捨てる。天馬はあきらめきれず元東洋チャンピオンの隼にコーチを頼む。寺山修司初の商業作品だが、随所に寺山らしさを見せる。具志堅用高、白井義男、ファイティング原田、ガッツ石松などが特別出演し、ガッツあふれるファイティング・シーンで魅了する。
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春婦傳
制作年:
同じ原作を映画化した谷口千吉の「暁の脱走」と比較され、公開当時は失敗作の烙印を押された不運な作品だが、時を経て清順再評価の気運とともに、この映画も見直されてきた。撮影当時は中国と国交がなく、御殿場の広野に中国の山脈を合成したという清順映画の中で珍しく特撮を多用した作品。激戦下で傷ついた男と塹壕の中で横たわり、空を見上げる女の目に砲火が花火のように美しく映えるシーンに、清順独特の映像美が見られる。第二次大戦中の天津、気性の激しい売春婦の春美は、副官の当番兵をしている三上に惹かれる。副官に言いなりの三上を反抗させようと春美は三上をけしかけ、二人は肉体を交わし合う。だが、それを知った副官は三上を最前線へと送った。一時は八路軍に捕えられた三上は無事に帰隊するが、軍法会議にかけられ……。宣伝では膨大な製作費を使った大野心作とうたわれたが、その実「ビルマの堅琴」(1956)の小道具の残り物を使うなど苦労があった。“日活流れ者”の清順らしいエピソードだ。
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夜の勲章
制作年:
数日前から姿を消した姉の行方を捜して欲しい、と看護婦から依頼を受けた探偵の阿久津純一。調査を続けるうち、姉は麻薬中毒患者で、異国で死んだ父の遺産1000万円を持って行方をくらましていることがわかる。そして事故発生後7日目、遺産の入った預金通帳とともに姉の死体が発見される。失踪事件から始まる、ハードボイルド・スタイルのサスペンス。
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カモとねぎ
制作年:
3人の詐欺師が競艇の八百長でひともうけした。その金を狙って女が現れるが、3人の詐欺師は女と手を組む。この4人が「スパイ大作戦」さながらに、あの手この手で詐欺をくり返すコメディ。邦画には数少ない犯罪喜劇の良質の1本。硬派の作品が多い森雅之が珍しく笑わせる。
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あした来る人
制作年:
月丘夢路と新珠三千代が美しさを競う井上靖原作による川島雄三作品。すれ違う男と女の姿を独自のタッチで描く。大貫克平と、八千代の仲は冷えきっていた。ささいなケンカから八千代が実家に帰ったあと、克平は友人とカラコルム山脈征服の計画を実行しようとしていた。助監督はチーフを今村昌平が、セカンドを浦山桐郎が務めている。
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黒い雨
制作年:
井伏鱒二のベストセラー小説をもとに、今村昌平監督が原爆被爆者の悲劇を庶民の普通の生活を通して淡々と綴った力作。美しいモノクロームの映像が静かに戦争の真実を映し出す。1945年8月6日、広島。高丸矢須子は瀬戸内海の小舟の上で強烈な閃光を見た。その直後晴れた空はたちまち暗くなり、矢須子は黒い雨を身体中に浴びてしまう。被爆後遺症の村人たちに小沢昭一や三木のり平といったベテラン・コメディアンを配し、悲惨な物語をどこか喜劇的に描いている。矢須子が風呂場で髪をとかし髪が抜け落ちるシーンで、矢須子役の田中好子が浮かべる笑いは衝撃的だ。カンヌ映画祭ではグランプリを本命視されていたが、惜しくも逃した。
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青い乳房
制作年:
清順の前作「踏みはずした春」に続く日活無軌道青春映画第2作。小林旭は再び不良少年を演じる。内容は一種の家庭崩壊劇で、継母の過去の強姦、エロ映画製作、恐喝、痴話ゲンカなど不道徳のオンパレードであるが、清順は題材に流されず、独自の映像美で画面を切り取っている。原作名は「嘆きの乳房」。
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豚と軍艦
制作年:
社会の下層を生き抜く人間たちの欲望のエネルギーを賛嘆し、かつ笑い飛ばす、ふてぶてしい作風で異彩を放った今村昌平監督初期の秀作。米軍基地に隣接する横須賀を舞台に、チンピラの欣太がヤクザ組織にほんろうされ、機関銃を乱射するに至るさまを、重厚に辛らつに描き出す。美も醜も共々にかみ砕く今村演出の力業は充実のきわみを見せ、いわゆる“重喜劇”のスタイルを本作で確立した。ヤクザ組織の子分・人斬り鉄次役の丹波哲郎が、虚勢ばかり張る小心者を快演。胃病をガンと思いこんで鉄道自殺をはかるが果たせず、保険会社の大看板にしがみつくという抱腹絶倒の名シーンを残した。欣太の恋人役・吉村実子はこれがデビュー作。重要な役どころに捨て身で挑み、清新な演技を見せた。
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「エロ事師たち」より 人類学入門
制作年:
当時の性風俗にスポットライトを当て、日本人の性をブラックな笑いを交えて描いた人間喜劇。主演の小沢昭一の演技が素晴らしく、主演男優賞を総なめにした。エロ事師・スブやんは、金持ちや斜陽族相手にエロ8ミリを製作・販売しているうちに自分の方はインポになる。エロ8ミリが危なくなった彼は、死んだ愛人に似せたダッチワイフ作りに異常なまでにのめり込んでいく……。ラスト・シーンは仏教思想の影響が見られ暗示的に終わっている。俗世間のエロ事にわが身を捧げ、奥義をきわめて脱俗していく境地。
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清作の妻
制作年:
1924年日活版(村田実監督)に次ぐ再映画化。元囲われ者の若尾文子が、村の模範青年と結婚する。村人たちの白い目。夫は日露戦争で負傷して帰るが、二度と戦場へ行かせぬよう、妻は夫の目を五寸釘で突くのであった。増村流の女性のパッションが凄まじく鬼気迫る。
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非行少女
制作年:
デビュー作「キューポラのある街」で、一躍名をあげた浦山桐郎が、和泉雅子を主演に起用した監督第2作。金沢へ帰ってきた三郎は、幼なじみの若枝と再会するが、彼女は絶望的な環境のなかで身も心もすさみきっていた。ついに若枝は非行少女の保護機関である北陸学園に入れられるが、三郎は彼女を励ます。浦山桐郎はともすればセンチメンタリズムに陥りやすい題材を、1歩手前で抑制をきかせ、これをシャープな佳作に仕上げた。日活時代は始終吉永小百合の影に隠れた存在だった和泉雅子が、一世一代の好演を見せる。
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スクラップ集団
制作年:
野坂昭如の原作を田坂具隆が松竹で初演出した喜劇。元汲み取り屋、元福祉事務所のケースワーカー、公園の清掃人、安楽死の研究に没頭する医者の4人が、大阪・釜ヶ崎を舞台に人間生活につきまとうすべての屑をスクラップにする商売を考えつき大繁昌となるのだが……。
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競輪上人行状記
制作年:
西村昭五郎監督の会心のデビュー作。住職の突然の死で、オンボロ寺を任された男が未亡人への思慕も手伝って、真面目に務めを果たそうとする。ところが未亡人にふられて、ヤケになって競輪に狂い、すべてを失う。最後には競輪の予想屋になって生き抜いていくバイタリティーが、実に爽快だ。
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肉弾
制作年:
主人公は、固有名詞のない“あいつ”。インテリらしい度の強いメガネをかけ、魚雷をくくりつけたドラム缶に入り、女郎屋の番傘をさして、ギラギラの太陽に照りつけられながら、静かな洋上をのんびりと浮かんでいる。敗戦間際の頃“あいつ”は、仲の良さが微笑ましい古本屋の老夫婦や、防空壕の中で結ばれたが空襲で死んでしまった、セーラー服の美しい少女との幸福だった時間を想い浮かべる……。岡本喜八監督の戦争への屈折した思い、青春への痛みと感傷が色濃く反映されている戦争ドラマの傑作。それを悲壮に描くのではなく、コミカルなタッチで綴っていて、より心にしみる作品に仕上がった。寺田農、大谷直子の初々しい演技も印象深い。
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ガリバーの宇宙旅行
制作年:
みなし子のテッドは、ある晩人形の軍人、野良犬のマックとともに、遊園地の宇宙館に潜り込む。ところが夜警に追われ、ロケット花火で宇宙へ飛び出してしまう。そこで『ガリバー旅行記』のガリバー老人と出会った一行は、ロケットで“青い希望の星”を目指して宇宙の旅へ。しかし青い星は、その国民たちが作ったロボットに支配されていて、ガリバー一行はさらわれた星の姫の救出のため、青い星に乗り込んでいく。ロボットの弱点がただの“水”だったりと、ユニークなアイデアが盛り込まれたオリジナル・ファンタジー。フランスの名作アニメ「やぶにらみの暴君」に影響された部分もあるが、根強い人気に支えられている佳作。テッド少年とお姫様を、今は亡き坂本九と、当時のアイドル・本間千代子が吹き替えている。
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喜劇 急行列車
制作年:
特急列車の専務車掌・青木吾一は鉄道一筋人間で、4人の子どもに“特急”“さくら”“つばめ”“ふじ”と名付けるほど。ある日長崎行き“さくら号”で吾一は初恋の人・毬子に出会う……。
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喜劇 女の泣きどころ
制作年:
酒を飲んでは失敗し、男でも失敗で、日本全国あちこちの小屋を転々と渡り歩くさすらいのストリッパー二人組。“キミたちには向上心がないのか!”と怒鳴られても、ドジぶりは相変わらずで……。太地喜和子の“酔態”ぶりが艶っぽい。喜劇・女シリーズを受け継いだコメディ。
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越後つついし親不知
制作年:
原作は『雁の寺』以降発表される作品が次々に映画化された水上勉の同名の小説で、監督の今井は持ち前のリアリズムで名をなしたわけだが、ここではむしろロマンティックに題材を扱っている。一見すると二人の男の確執の物語のようだが、その実、おしんという女の幸少ない人生が情感たっぷりに描かれた。冬の間、主人公が伏見の造酒屋へ出かせぎで働きに出ている時に同郷者の仲間に妻を犯され、その結果、妻が身ごもってしまうところから起こる悲劇を、神々しいばかりに美しい佐久間良子、お人好しの小沢昭一、憎々しい三國連太郎らが見事に演じきる力作である。
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キューポラのある街
制作年:
「青春の門」「青春の門・自立篇」「夢千代日記」などで知られる浦山桐郎の監督デビュー作。舞台は鋳物の町・埼玉県川口市。そこに住む職人かたぎのガンコな父を持つ、ジュン、タカユキの姉弟が、貧しいながらもけなげに生きていく様子を描いている。これにタカユキの友人・サンキチの複雑な家庭環境、ジュンの進学問題、鋳物工場の組合問題と、当時の世相を反映した社会状況が織り込まれているが、これを浦山は大上段にではなく、あくまで日常的に捉え、さわやかな感動を呼ぶ。当時18歳の吉永小百合は、本編で史上最年少のブルー・リボン賞主演女優賞の受賞者となり、女優として開眼。アイドル・スターの筆頭として黄金時代を築いていく。
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幕末太陽傳
制作年:
川島雄三の代表作。元ネタになるのは落語の『居残り佐平次』だが、これに『芝浜の革財布』『品川心中』のネタを取り入れている。あと5年で明治維新という、文久2年の11月、品川の遊廓街で、佐平次は仲間を連れて大尽遊び。ところが、金は一文も持っていない。かくして佐平次は居残りとなって、しばらくそこに腰を落ち着けることになる。宿にはもう一組居残り組がいる。高杉晋作を中心とする勤皇の志士たちである。佐平次は、この高杉と仲良くなったり、廓の仕事を要領よくこなし、たちまち廓の人気者となる。映画はこれらの人物を絡ませ、佐平次のバイタリティーをテンポよく活写していく。佐平次は胸を患っており、時折、咳き込みながら見せる暗い顔には死の匂いが漂っていて、そうしたニヒリズムがバイタリティーの裏に見え隠れし、川島の体質を体現した傑作となった。
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