多摩美演劇舞踊デザイン学科が学生・教員総力挙げて挑む“新たな劇団の形”/ びびびvol.2『大工』柴幸男インタビュー

――振付・出演として近藤良平さんをはじめ、ドラマトゥルクの野上絹代さん、応援団長の糸井幸之介さんと、昨年同様プロフェッショナルたちの協働にも注目が集まっています。
柴:『大工』はベートーヴェンの『第九』にかかってもいて、近藤さんにはまさにベートーヴェン役を担っていただくのですが、ほぼ出ずっぱりで指揮をしていただくんですよ。近藤さんが指揮を振ると、やはりそこからダンスが始まる。俳優のみんながその動きの一つひとつに影響を受けていることが感じられ、刺激的だなと感じます。僕はどうしても演劇サイドからのアプローチで作品を形作っていく節があるのですが、近藤さんが音楽やダンスの切り口から作品を作ってくれているので、そうした挟み撃ちのような魅力が感じられる作品になっていると思います。
――『アートマーザー』も鮮烈な舞台風景でしたが、今回も「家」の欠片のようなものが方々から集まってきたり、はたまた散らばったりと、繊細かつダイナミックな舞台美術や構図にも目を奪われました。そうした空間づくりにおいてはどんなことにこだわっているのでしょう?
柴:まず、彩の国さいたま芸術劇場がすごく素敵な空間なんですよね。というのも、僕は『アートマーザー』の下見で初めて小ホールを訪れたので、すごく感動をしたんです。この素敵な空間といかにして濃密なタッグを組めるか。そんなことを考えさせられる劇場でした。美術も昨年同様に学生がコンペを経て担当しているのですが、「『マインクラフト』みたいなブロックがあったら面白いかな」とか、興味深いアイデアも出てきたりして…。客席が半円形みたいになっているので、声の通りや音の響きを鑑みて美術を配置したり、結構色々な側面から考え抜いたので観客の方にも楽しんでいただけたらと思います。
――学生と教員がアイデアを出し合いながら一つの上演に向けて創作をする。この他ではなかなか見られない光景は<びびび>というプロジェクト最大の魅力でもありますよね。
柴:そうですね。僕自身もこの場だから試せることや、選べることがあると日々感じています。例えば、今回の美術を一つとっても、自分の劇団やプロデュース公演だとしたら、恐らく選ばないような美術プランなんです。僕個人としても、東京で長編作品を作るのが久しぶりだったので、「今までの自分がやらなかったことをやってみようかな」と思ったりもして、使いこなせる気がしないものに不安を覚えながらも挑戦することができた気がします。結果的に使いこなせたのかというと、やはりだいぶ苦戦はしたんですけど(笑)。でも、稽古を重ねていく毎に、俳優たちもどんどん空間と仲良くなるというか、自分の手足の延長線上に美術があるように使えるようになってきたので、挑戦してよかったと思いました。今は「早く劇場に持って行って試したいね」とみんなでワクワクしています。
――この場だから試せること、選べること、そして挑戦できること。学生にとってはもちろん、教員でありプロの表現者であるみなさんにとっても刺激的な創作現場であることが伝わるお話です。
柴:僕はこれまでも学生や市民の方など、経験にバラつきがある方と話し合いながら作品を作ることが比較的多かったので、普段自分がやっている感覚を応用している部分も結構あるんですよね。一方で、近藤さんや糸井さんや野上さんなど、プロ同士のコラボレーションはすごく新鮮です。自分の他に演出家が3人も現場にいてくれる環境なんてまずないですから(笑)。刺激や影響を受けることも多いですし、「自分の演出って一体なんなんだろう?」ということもすごく考えさせられるんですよね。<びびび>の作品性を培う過程で、このコラボレーションの状態はすごく面白く作用していると感じます。稽古場があまりにも頼もしいので、今後がちょっと不安になりそうなくらい。当たり前だったことなのに「あ、今日は演出家は自分一人なんだ」とか思いそうで…(笑)。
◆<びびび>は世にも珍しい、 新たな劇団の形?!
【公演概要】
多摩美シアタープロジェクト びびび vol.2『大工』
9月11日~13日:埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 小ホール
◆作・演出
柴幸男(ままごと)
◆ドラマトゥルク
野上絹代(FAIFAI)
◆応援団長
糸井幸之介
◆振付
近藤良平(コンドルズ)
◆出演
近藤良平(コンドルズ)
荒木結心
池田麻美
石本こだま
一木海南江
岩波龍之介
上田柊斗
岡井ロレン
猿田雅子
鈴江花恋
鈴木ベニ
橘莉杏
田中我門
TEWO
飛松思映
原田昊希
廣瀬功作
◆オンステージ・スウィング
尾藤桃奈子 室田樹希
【公式サイト】https://sdd.tamabi.ac.jp/bibibi
【公式X】@bibibi_sdd