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シニフィエ・小野晃太朗、新作では“現代の悪”を再考 舞台『百合鴎』インタビュー

演劇

■演出への苦手意識や中止のトラウマを乗り越え、岸田國士戯曲賞ノミネートへ

――AAF戯曲賞を受賞後、シニフィエとしての上演活動も再始動されることになりましたが、これはどういう経緯やきっかけがあったのでしょうか?

小野:シニフィエが再始動する前から継続的に声をかけてくれていたプロデューサーが、受賞後にも上演の企画を持ってきてくれて……。その手を取るなら今だと思って、思い切ってやってみることにしました。上演に対する自信を喪失していたし、自分自身の回復も含めて一か八かのタイミングだったので、2015年にやった短編の『おわれる』をリライトして恐る恐る進めたのですが、結構上手くいったというか、望んでいるクリエーションの在り方に近づけたんです。その時のプロデューサーが、以降もドラマトゥルクとして伴走してくれたり、新作『百合鴎』にも一緒に考える人として参加してくれている豊岡演劇祭のプロデューサーでもある松岡大貴さんなのですが、本格的に一緒にやるようになったのは、この『おわれる』が最初でした。

――演出への苦手意識を乗り越えた公演だったのですね。具体的には、小野さんにとってどんなクリエーションの在り方が理想なのでしょうか?

小野:長らく演出が苦手だと思っていた理由の1つに、「リーダーシップを発揮するにあたって意識的に権威性を使わなければならない局面があるんじゃないか」と思っていた節があって……。というのも、当時は演出家へのそうした印象が根強かったですし、そうではないモデルがまだまだ少なかったんですよね。でも、自分はトップダウンではなく、ボトムアップで作りたい。一方で、指示やリクエストを明確に出さないと、俳優を困らせてしまうことにもなるから、ある程度の強さを持っていなくてはならないという葛藤もありました。

 作・演出はそもそも分離していた方が健全なんじゃないかと思ったり、2人分の仕事を1人でやるのは良くないんじゃないか、といろいろ考えていたのですが、『おわれる』では座組とフラットに言葉を交わしたり、全員で考えながら動いたり試したりすることができ、このスタイルなら演出もできるかもと思ったんです。その後、中止のトラウマとなった『口火』を再構築して上演できたことをきっかけに、シニフィエを再始動させることになり、2024年に『ひとえに』をこまばアゴラ劇場で上演しました。

――そして、同作で岸田國士戯曲賞ノミネートへ。これまで以上に注目も集まったのではないかと思うのですが、当時の心境はどんなものでしたか?

小野:松岡さんには当初から「これで岸田を!」と言われていたんですが、上演活動に復帰して最初の新作だったので、まさかノミネートされるとは思っておらず、本当にびっくりしました。でも、紛れもなく渾身ではあったんです。自分の問題意識に向き合うところから始めて、正直に全力を尽くすしかない、という思いで執筆した作品でした。

 執筆中は、あらゆる社会的なトピックスも追いかけていたのですが、情報の多さに心が追いつかなくなっていく瞬間もありました。感情が足元で横たわっているのだけど、それが息絶えて冷たくなってしまっているのか、それとも、ただ眠っているだけなのか。そういうことを確かめる気持ちで書き進め、立ち上げた作品でした。世の中に起きている「分断」、その中でもとりわけを同じ考え方同士の人たちの間に起きる争いを取り上げたい、という気持ちがありました。

――観客としても、その手触りはものすごく生々しく感じました。例えば、フェミニストを名乗る人を、同じくフェミニストを名乗る人が「あなたはフェミニストではない」と批判したりすること。そういう時の分断の果てしなさを痛感しながら、それでも他者と生きるままならなさと切実を感じる作品でした。

小野:そうなんですよね。結構そっちの方が深刻かも、と思っていて……。集まらなきゃいけない時に言い争いになる時の心の引き裂かれる感じとか、小さいことには目をつぶって大きいところでまとまろうってしてしまうこととかを考えるんですけど、歴史を振り返って考えると、小さいところに目をつぶり、「それはまたあとでね」と交わした約束を破ってきたから起きている分断もたくさんあって……。あと、自分と同じ思想や思考の仲間が大きな過ちを犯した時にどうしたらいいのかとかも考えましたね。

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■3つの古典作品を原案に、現代の悪を再考する新作『百合鴎』

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【公演概要】

シニフィエ『百合鴎』

■日程・会場
9月18日・19日 東京・すみだパークシアター倉

■戯曲・演出:小野晃太朗

■出演:金定和沙、菊池佳南、新田佑梨、はぎわら水雨子、原田つむぎ、藤家矢麻刀、堀夏子
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