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『リメンバー・ミー』は、なぜ泣ける? “夢と家族”の両方を諦めない物語がポイントに

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忘れないことの大切さ

 本作は、夢と家族の衝突の解決と同時に、記憶をめぐる物語でもある。記憶の大切さ、忘れずに継承していくことの尊さを、本作は「二度目の死」というアイディアを導入して描こうと試みる。

映画『リメンバー・ミー』(2018) 写真提供:AFLO
 「二度目の死」は残酷だ。ただの死以上に残酷さを感じさせる。通常の死が肉体の死だとすれば、二度目の死は精神の死と言える。だれも覚えていなかったとすれば、「自分は何のために生きてきたのか」と感じるだろう。記録や記憶を風化させないことは、あらゆる悲劇にとって大切なことだ。死者の日のような風習がメキシコにあるのは、自分という存在は自分だけで成り立っているのではなく、連綿と続く家族が自分をこの世界に生んでくれたのだということを忘れないためだ。日本にもお盆という風習があるが、肉体が滅んだとしても、人の精神は何らかの形で残っていき、それが新たな未来の糧になることを忘れないためにこうした風習があるのだ。

 本作のタイトルが『リメンバー・ミー』(私を覚えていて)であるのは、そのことを直接的に伝えている。音楽も、映画も、写真も、後世に何かを残すためだ。人は有史以来、何かを残そうとし続けてきた。生きた証を世界に刻んできたのだ。

 忘れなければ、たとえ肉体が滅んでも心はつながっている。そのことを描くことで家族の絆も一層強固なものになっているから、この映画は感動的なのだ。夢を追いかけ、自分らしく生きる少年を応援し、家族も大切にしてゆく。伝統と新しい生き方は対立しない、むしろ、家族の歴史あっての自分らしい生き方があるのだと本作は謳っているのだ。(文:杉本穂高)

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