『クジャクのダンス、誰が見た?』広瀬すずの強くまっすぐな瞳と、松山ケンイチの軽やかさが本格サスペンスへ誘う
関連 :
『クジャクのダンス、誰が見た?』第1話より (C)TBSスパークル/TBS
幼くして母を亡くし、大学生で父も失いひとりになった心麦だが(実の親子かどうかはひとまず置いておいて)、彼女には父からもらった強さがある。葬儀の際に、伯母(原日出子)から「つらいだろうけど、前を向いて生きていかなきゃダメよ。泣くのは今だけにしなさい」と声をかけられた心麦は、「泣いてても父が帰ってくるわけじゃありませんから。それに、前を向くかどうかは、私が決めます」ときっぱり答える。
また終盤、松風が、一度疑いというどす黒いものを浴びたらもう元には戻れないことのたとえとして、プリンの上にコーヒーをかけ「こうなってしまっても、これはプリンと呼べるだろうか」と投げかけたときも、プリンをかきこみ「これは、プリンです」と断言する。さらに「私は、私の目を信じてますから」と伝えた。
そんな心麦に育てあげたのが、幼い頃、「クジャクのダンス」の話を聞かせ、周囲から疑いをかけられた彼女を信じて抱きしめた父。親子は互いを信じあってきた。そして父は彼女に、逮捕された人は“冤罪だ”とする手紙を託し、心麦は父の言葉を胸に置く。
さらに、心麦の食べていたプリンを松風も頬張り、(僕もこれはプリンだと思う)とでも言うかのように、「お父さんを信じる君を信じるよ」と口にした。本筋とは関係ないが、ここでプリンのカケラを口の端につけ、ちょっとした愛らしさを松風に添えるのが、松山が演じているからこその味だ。事務所にいくつも並ぶ彼のメガネも、心麦の澄んだ瞳とはまた違う、さまざまな角度から物事を見る弁護士としての目を表しているようでもある(原作とは違い、ドラマでは森崎ウィン演じる、松風の幼なじみで共同経営者の弁護士・波佐見もまたメガネ姿)。