主役は解雇、現場はまるで「動物園」…『エクソシスト』原作者が執念で作り上げた“正統派続編”が劇場初公開
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ブラッティは挑発的なヌード劇場を舞台にした喜劇『The Night They Raided Minsky's(ミンスキー劇場がガサ入れを受けた夜)』(1968年・未公開)の新鋭ウィリアム・フリードキンを高く評価して本作の脚本を送り、製作スタジオを探したが、自他共に認める「奇作」ゆえ反応は薄かった。
その後、フリードキン監督と組んだ『エクソシスト』が未曽有の大ヒット。ブラッティは再び本作の映画化を目指して粗削りな原作を改稿。構成を練り直して文体を洗練させ、1978年に『The Ninth Configuration(邦訳題「センター18」)』として再出版する。
同じ頃、ブラッティは自分の手を離れて製作された『エクソシスト2』(1977年)に愕然とする。その理由のひとつは――ブラッティが作品の根幹に据えたキリスト教に基づく概念を大きく逸脱し、悪魔祓いを異教のウィッチ・ドクターと同一視した“愚行”にあったと想像する。ブラッティにとって『エクソシスト』の精神を受け継ぐ正統な「続編」を作ることは、もはや揺るがぬ使命となった。
しかし、大手スタジオは企画をたらい回しにするばかりで埒が明かず、『プリズナーNO.6』(1967~1968年)の有名俳優パトリック・マクグーハンを主演候補にするも、資金が調達できない。仕方なく“狂える”患者たちの過去と背景を明かすエピソードも脚本からごっそり削った。ブラッティはマリブに所有していた家を売却して製作費を捻出。不足分の出資を清涼飲料水でお馴染みの複合企業ペプシコに求めた。同社が出した唯一の条件は、撮影をハンガリーで行うこと。かの地では余剰資金の運用は国内に限られており、撮影隊はブタペストに飛んでリハーサルを始めた(本編にペプシの自販機がチラリと登場するのでお見逃しなく)。
■難航を極めるキャスティング 現場はまるで「動物園」
俳優陣のキャスティングも混乱を極めた。当初の主演はブラッティが敬愛するイギリスの名優ニコル・ウィリアムソン。だが、彼はどうしてもアメリカ海兵隊員には見えず、癇癪持ちゆえにホテルから国際電話をかけようとしてオペレーターとひと悶着起こし、壁から電話を引き抜いてスイートルームの窓ガラスに叩きつけ、主役を解雇された。代打に選ばれたのは『エクソシスト』で悩める若き神父役の候補になったステイシー・キーチ。感情を押し殺したように物静かだが、心の底に制御不能な暴力の悪魔を抱えた主人公のケーンを、キーチはウィリアムソンを念頭に置きながら演じたという。
映画『トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン』場面写真
(C)2026 American Genre Film Archive (C) 1979 The Ninth Configuration Company. All Rights Reserved.
宇宙飛行士カットショウ役は『ホロコースト/戦争と家族』(1978年)でエミー賞に輝いたマイケル・モリアーティが降板した為、『冷血』(1967年)の一家惨殺犯役でブレイクしたスコット・ウィルソンが務めた。彼が本来、演じるはずだった多重人格者役には『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)のジョージ・ディセンゾを配役。ディセンゾが元々演じるはずだった軍医のズボンを盗む患者役はブラッティが自演と、遠征ロケゆえの臨機応変な対応が求められた。ちなみに酒場の地獄絵図をタレこむウェイトレス役はブラッティ夫人で元テニス選手のリンダ・トゥエロだ。
共演には『エクソシスト』の神父役でアカデミー賞候補となったジェイソン・ミラー、『エクソシスト3』で神父役を演じたエド・フランダースも出演。さらに、野獣派ネヴィル・ブランドに悪役俳優リチャード・リンチと、超個性的な面々が勢揃い。親友のブラッティに直訴して、わざわざ役を作って貰った『マニアック』(1980年)のジョー・スピネルを含め、濃い顔のおっさん軍団が自由闊達に狂人芝居に耽る姿は、まさにエキセントリック天国。眼福のひとときだ。
脇役で起用された『ニューヨーク1997』(1981年)のトム・アトキンスは「現場はまるで動物園だった」と回想する。役者はクセモノばかり。過去にやらかした者、実力はあるのに仕事探しに苦労する者、怒れる酔っぱらい。隙あらばプラハやモスクワに遊びに出ようと企む猛獣たちを引率するブラッティは、脱走を阻止すべく撮影現場でギリギリまで登板予定を明かさなかった。
とはいえ、主役をクビになったニコル・ウィリアムソンを含め、大半の役者は『エクソシスト3』に再登板している。ブラッティは義理堅いのだ。

