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主役は解雇、現場はまるで「動物園」…『エクソシスト』原作者が執念で作り上げた“正統派続編”が劇場初公開

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ステイシー・キーチ

ウィリアム・ピーター・ブラッティ

山崎圭司

■悪魔と神をつなぐ“見えない線”

 完成した映画は興行こそ振るわなかったが批評家ウケは良く、ゴールデングローブ賞の作品賞と助演男優賞候補となり、ブラッティは見事、脚本賞を受賞した。再公開時に編集されたものを合わせて、5つ以上のバージョン違いが存在する本作。日本ではビデオで発売されて、知る人ぞ知る傑作となり、特に熱心なファンの間で『エクソシスト』と共通するモチーフが話題になった。

 例えば、『エクソシスト』の悪魔憑き少女が小便を垂れながら呟く恐怖の予言―「お前は宇宙で死ぬ」。宇宙飛行士カットショウの錯乱は、まさにその後日談を思わせる。キリスト教の世界観で、神の存在を自問するブラッティにとって、神も悪魔もない「宇宙」の絶対的孤独は発狂レベルで恐ろしいのだろう。

映画『トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン』場面写真 (C)2026 American Genre Film Archive (C) 1979 The Ninth Configuration Company. All Rights Reserved.
 そして、カットショウがケーンに手渡す「聖クリストフォロスのメダル」。『エクソシスト/ディレクターズ・カット版』(2000年)では、このメダルが中東の発掘現場から出土し、母子家庭で育った若い神父の記憶を苦く横切り、悪魔祓いを終えた少女の母親の手元に辿り着く。クリストフォロスはイエスの変わり身である幼子を肩に担ぎ、救世主が担う万人の「罪の重さ」を知った人物で、「旅人」の守護聖人でもある。本作の終盤、カットショウの元に戻ってくるメダルには、深い意味が込められているのだ。

 雄弁な悪魔が沈黙する神の存在をあぶり出す『エクソシスト』に対し、本作は人間の善の心から神の存在を探る。正気と狂気の境界が曖昧になる感覚は悪魔憑きのテーマと似ており、引き裂かれた善悪を心に宿すケーンの混乱は『エクソシスト3』が描く不可解な憑依現象にも通じる。本作は混乱した物語のなかに、目の覚めるような真理を突く名台詞を仕込み、“信仰の神秘”三部作の中編として、前後の作品で提示された謎を鮮やかに補完する。

■ブラッティが信じた“救い”のかたち

 ブラッティは2006年に息子を19歳の若さで失くし、大きな喪失感を味わった。だが、彼の死後、愛息が好きだった庭の木が真冬に芽を出して翌日には枯れ、壊れた電灯が30秒ほど灯る、不思議な“あの世からサイン”を体験している。この世界がどれほど残酷でも、人知を超えた救済はきっとある。奇跡が舞い降りる本作のラストシーンには、ブラッティの愚直なまでに固い信念が、眩く輝いているのだ。

(文:山崎圭司)

特集上映「新宿ハードコア傑作選2」はシネマート新宿にて開催中。『トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン』は4月24日~4月30日の1週間限定上映。

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