ジャンル映画として定着した山岳映画の魅力とは?
また、黎明期から現在までの作品を系譜にして俯瞰してみると面白いことがわかるそう。「山岳映画の系譜を受け継ぐ人の繋がりに注目して観ると、それぞれの影響が発見できます。例えば、戦後初の山岳映画『銀嶺の果て』(47)の脚本を手掛けたのは黒澤明です。『黒い画集 ある遭難』(61)の監督は、黒澤組で助監督を務めた杉江敏男監督。同じく黒澤組の助監督だった森谷司郎は『八甲田山』(77)、『聖職の碑』(78)を監督。両作品ともに撮影監督を務めた木村大作は、黒澤組の撮影助手としてキャリアをスタートし、『剱岳 点の記』(09)で自ら山岳映画のメガホンを取っているんです」。
黒澤映画の代名詞と言えるダイナミックな映像やドラマチックな季節の表現方法が、山岳映画の表現に合っているのではないだろうか。それ故、巨匠から多分な影響を受けた弟子たちが活躍してきたのかもしれない。
ダイナミックな映像はやはりスクリーンで楽しむのに限る。本格的な登山シーズンが始まる前に、上映会で一足先に”山”を楽しんでみてはいかがだろう。(取材・文:小竹亜紀)