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梅雨にこそ…鬱になるSF映画 『ソイレント・グリーン』『ミスト』など5選

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■『ミスト』(2007) 21世紀の鬱SFの決定版!

映画『ミスト』(2007)場面写真 写真提供:AFLO
 嵐の翌日、街を覆った白い濃霧。そのなかには人類がかつて遭遇したことのない、異形の怪物軍団が潜んでいた。日用品店に篭城した人々は必死のサバイバルを繰り広げるが、ひとりまたひとりと対処不能な怪物の犠牲者となる。伝説の鬱エンドで有名な本作だが、それが決して不愉快な結末ではないのは、無残な死を描くことを恐れない名匠フランク・ダラボンの力強い筆遣いあってこそ。文字通り五里霧中、容赦ない激戦を通して、生存への道を探る展開はカタルシス満点だ。混乱に乗じて「子どもを生贄(いけにえ)にせよ!」と言い出す狂信的なおばさんの問答無用の結末も含め、常識ある善人ぞろいの登場人物たちに全力で感情移入して、壮絶に裏切られ、圧倒的な鬱気分に打ちのめされるべし。

■『ゼイリブ』(1988) 愉快な幻想と鬱な現実、どちらを選ぶ?

映画『ゼイリブ』(1988)場面写真 写真提供:AFLO
 夢の世界では万能、しかし現実は…。SF大作『マトリックス』(1999)が暴いたバーチャルと日常の落差が生む鬱。時には辛らつな風刺を込め、目の前にある現実は本当にリアルかを問うのもSFの使命だ。家なし失業男が真実を見抜く“色眼鏡”を手に、上級市民に変装した骸骨宇宙人と戦う『ゼイリブ』では、人類の大半はサブリミナル広告で洗脳され、思考停止状態にある。巨大な敵と対峙する彼の苦闘は絶望的だが、孤立無援の鬱状況を強引に正面突破する結末は映画ならではの醍醐味(だいごみ)だろう。

 鬱なSF映画は安直なハッピーエンドを蹴散らし、毒をもって常識を破壊する一種のショック療法だ。これが映画でよかった! と胸をなで下ろすのと同時に、凝り固まった頭を少し柔らかくしてくれる。暗い雨雲が去れば晴れ間が覗く。梅雨の今こそ、安心して鬱になるSF映画の世界に浸ろう。(文・山崎圭司)

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