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今期主演ドラマ2作の掛け持ち! 異なる“ポンコツ”男を演じる松坂桃李の企み

エンタメ

■表裏・二つの異なる“ポンコツ”役を演じる松坂桃李の企み

 興味深いのは、『あのときキスしておけば』で演じる桃地と、『今ここにある危機とぼくの好感度について』の真が、くしくも表裏の関係にあること。

 前者は、他者への優しさや思いやりや「推し」の漫画への深い愛があり、物事の真実に気づく敏感さもおそらくありつつも、自分自身の外見や他者からの評価などには全く興味がない。後者は自分の好感度だけが関心事で、物事の核心には触れず、疑問も抱かず、真実は見ずにやり過ごしてきた。言ってみれば真ん中だけ、外側だけの関係性だが、作品が進むにつれ、互いの欠損を埋めるように成長していくはず。

 偶然にも同クールで連日放送と書いてみたが、実はこれは松坂桃李の密かな企みではないか。

 なにせ松坂は、俳優デビュー作で初主演作の『侍戦隊シンケンジャー』(テレビ朝日系)のときからすでに“殿の替え玉”としての苦悩や葛藤をにじませていたように、最初からどこか「陰」が似合う役者だった。さらに、近年は『弧狼の血』では正義感の強さゆえにルールに従いつつも葛藤するエリート刑事を、『新聞記者』では「国民に尽くす」という信念とは裏腹に不都合なニュースをコントロールする官僚を演じるなど、着実に経験値を積み重ね、評価を高めている。

 しかし、そうした経験や技巧を重厚な役柄・表現ではなく、コメディタッチの二つの異なる“ポンコツ”役の苦悩や葛藤に転じてみたらどうなるか。結論から言うと、明るく軽い雰囲気の役者が演じるわけじゃないからこそ、絶妙なヌケ具合がクスリと笑える仕上がりになっている。これは「ポンコツ」役に込めた緻密な計算が見事にハマった結果ではないだろうか。(文:田幸和歌子)

<田幸和歌子>
1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムをさまざまな媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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