振り返るとトラウマシーンの連続! 青春映画の金字塔『スタンド・バイ・ミー』
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好評を博している金曜ロードショーの視聴者リクエスト企画に、『スタンド・バイ・ミー』(1986)が今夜登場。12歳の少年4人が体験するひと夏の冒険物語は青春映画の金字塔として名高いが、決して甘酸っぱいだけの昔話ではない。そもそも彼らの目的は森の中で死んだ少年の遺体を見つけて英雄になることなのだ。原作は『IT/イット』のホラー小説家スティーヴン・キング。彼があえて非ホラーに挑んだ作品集『恐怖の四季』に収められた一篇で、原題はずばり『THE BODY(死体)』。全編に散りばめられたキング流の毒っ気が、小さな棘(とげ)となって心に残るのが、この作品を「忘れられない1本」にする理由でもある。今回はそんなトラウマ的な名場面を改めて、振り返ってみたい。
【写真】少年4人の友情が蘇る『スタンド・バイ・ミー』(1986)フォトギャラリー
●えげつない年齢格差…不良による情け容赦ないカツアゲ
映画の舞台は1959年の夏、アメリカのオレゴン州の田舎町。冒険の旅に出た少年たちが、運悪くいきなり遭遇するのが素行の悪い不良たち。主人公ゴーディ(ウィル・ウィートン)は、事故死した兄の形見である大事な野球帽を取り上げられ、それをいさめたクリス(リヴァー・フェニックス)は不良集団のリーダー、エース(キーファー・サザーランド)に組み伏せられ、タバコの火で脅される。有無を言わせぬ年長者のカツアゲに、圧倒的な体格差に泣かされた子ども時代の苦い思い出がフラッシュバックするこのシーン。後に『24 ‐TWENTY FOUR‐』で目的のためには暴力も辞さない捜査官を演じるキーファーの原型が観られるかも。
●絶体絶命! 高さ30mの鉄橋を横断中、汽車が迫る!
次に少年たちを待つ試練が、目もくらむ高さの鉄橋横断だ。しかも、勇気を振り絞って渡り始めた途端、背後に汽車が出現。向こう見ずなエディ(コリー・フェルドマン)も大慌て。少年たちは腰の抜けた臆病者のバーン(ジェリー・オコンネル)を引きずりながら必死に鉄橋上を疾走する。撮影は実際に高さ30mの鉄橋で敢行。綿密な絵コンテを準備し、作り物の橋を歩く子役のアップ、実際の橋の上を走るスタント役者の遠景、汽車との合成映像を巧みに編集でミックス。短い場面だが、たっぷり手間をかけた緊迫の見せ場になっている。
映画『スタンド・バイ・ミー』(1986)より 写真提供:AFLO
●ゴーディが即興で語る破壊力満点のゲロ話
物語を書くことが趣味のゴーディが語る「パイ大食い競争の惨劇」は、監督のロブ・ライナーが「原作通りに映像化して良かったのか悩んでしまう」と、つい顔を曇らせるほどの強烈な絵面。もう少し趣味のいい話にした方が良かったかも、と後悔しつつ、カッテージチーズとプルーベリーパイの中身を混ぜた特製ゲロが飛び交う撮影現場はとても楽しかったそうだ。
●森の沼にハマって全身ヒルだらけ! パンツのなかも血だらけ!
こちらも原作通りのトラウマエピソード。原作者のスティーヴン・キングも川を渡ろうとしてヒルに食われた経験があるそうで、ゴーディがパンツの中を探り、指先が真っ赤に血で染まる場面は、キングの初長編小説を映画化した『キャリー』でヒロインが初潮を迎えるショッキングな瞬間を思わせる。パンツから取り出した巨大ヒルのサイズに観ているこちらも失神しそう。