クランクイン!

  • クランクイン!ビデオ
  • クラインイン!コミック
  • クラインイン!トレンド

  • ウェブ全体を検索
  • このサイト内を検索

中止、酷評も…“呪われた企画”『デューン 砂の惑星』映画化へのあくなき挑戦

映画

関連 :

デヴィッド・リンチ

アレハンドロ・ホドロフスキー

ドゥニ・ヴィルヌーヴ

●“呪われた”映画化の歩み 幻のホドロフスキー版

 1970年代、映画化にまず手をあげたのは、ハリウッドのプロデューサーで、当時、20世紀フォックスで「猿の惑星」シリーズを手がけていたアーサー・ジェイコブスだった。監督候補をデヴィッド・リーンとしたのはもちろん、砂漠と文明衝突の映画である『アラビアのロレンス』の実績を踏まえた資金集めが狙いだろうが、当時のリーンは『ライアンの娘』の興行的な失敗で失意のどん底にあり、たとえ実現しても引き受けたとは思えない。

 次に名乗りをあげたのがチリ出身の映画作家アレハンドロ・ホドロフスキー。2本のメキシコ映画『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』で、一躍芸術界の寵児となった彼が、パリに移って企画したのが『デューン』の映画化だった。

鬼才アレハンドロ・ホドロフスキー(ドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』より) 写真提供:AFLO
 しかし、ホドロフスキーは映画を12時間の大作にすると豪語したため、スタジオから資金が集まらず、撮影前に企画は頓挫してしまった。この実現しなかったホドロフスキー版については、当時、SF映画専門誌などで断片的に報じられたが、全貌が明らかになったのは、ずっと後の2013年に長篇ドキュメンタリー映画『ホドロフスキーのDUNE』が作られたおかげだった。

 ホドロフスキーは1975年にパリで製作準備に入るが、これが伝説化したのはスタッフとキャストの豪華さゆえ。フランスを代表するコミック作家メビウス、イギリスのSF画家クリス・フォス、スイスのシュールレアリスム画家で、『エイリアン』のデザインでも知られるH・R・ギーガー、ロサンゼルスのSF・特撮映画作家ダン・オバノンという夢のような顔ぶれが集められ、さらに、アトレイデス家の場面はピンク・フロイド、ハルコンネン家の場面はマグマと、英・仏を代表するロックバンドに音楽を依頼。出演者はデヴィッド・キャラダイン、ウド・キア、ミック・ジャガー、オーソン・ウェルズ、サルバドール・ダリに交渉していたというからすさまじい。

分厚い絵コンテ(ドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』より) 写真提供:AFLO
 『ホドロフスキーのDUNE』には、メビウスの絵コンテをアニメーション化して動かした場面がいくつもあり、ドキュメンタリー映画とはいえ、これ自体も『デューン』映画化の1本に数えたくなる熱気に満ちている。

・『デューン 砂の惑星』映像化作品
(1)『ホドロフスキーのDUNE』(2013)
(2)『デューン/砂の惑星』(1984)
(3)『デューン 砂の惑星』(2000)/『デューン 砂の惑星 II』(2003)
(4)『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)

 (1)がアレハンドロ・ホドロフスキー版、(2)が映画化実現となったデヴィッド・リンチ版、(3)がテレビミニシリーズ版、(4)が新作のドゥニ・ヴィルヌーヴ版となる。例えば、この4つすべてに、作品を代表する一大スペクタクルシーンである“サンドワームから作業員を救出する”シーンが含まれており、比べて見るとおもしろいし、それぞれの作者の考え方がよく判る。

 この場面、原作では“オーニソプター”という羽ばたき飛行機が登場するが、映像版で実際に羽ばたく翼を備えているのは(1)と(4)。そして、この時代の人類は重力制御を実現しており、室内の椅子や照明器具、ハルコンネン男爵も宙に浮いている。ならば飛行機に翼は必要ないと考えたのがリンチ版(デザインは『2001年宇宙の旅』の名匠トニー・マスターズ)。そこまで果断になれず羽ばたかない小さな可変翼を付けたのがテレビ版だ。ヴィルヌーヴ版はそこにすばらしい知恵を働かせて、重力制御には限界があり、大型機械を飛ばすには補助が必要と設定。リアリティがあって見た目もいい、理想的なオーニソプターを初めて作り上げた。これらは、実はそれぞれの作品が作られた時代の映像の技術的限界から導き出された答えでもあった。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ版のサンドワーム(『DUNE/デューン 砂の惑星』より) (C)2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
●意外なところに現れた影響 『スター・ウォーズ』は最初の『デューン』!?

 ホドロフスキー版が中止になった翌年、『スター・ウォーズ』(1977)が公開されて大ヒット。SF大作が斜陽の映画産業を救う可能性にハリウッド各社は開眼し、空前のSF映画ブームが訪れる。『スター・ウォーズ』で新時代の特撮映像を可能にしたのは、『2001年宇宙の旅』(1968)で経験値を上げたイギリスの撮影所と、アメリカ西海岸に集まった新世代のスタッフ。ここで映画史上初めて、どんなSF小説にも映像化の可能性が開けたことは大きかった。

 一方で、『スター・ウォーズ』の基本コンセプトは『フラッシュ・ゴードン』『バック・ロジャース』といった戦前のSF連続活劇を最新技術で甦らせようというものだったが、ジョージ・ルーカスといえども同時代のSFを無視していたわけではなく、そこには「デューン」シリーズの影響が入り込んでいた。惑星タトゥイーンの砂漠や原住民タスケン・レイダー、スペース・スラッグやサーラックといった巨大生物には、最初の『デューン』映像化と呼びたくなる完成度と感動があった。

2ページ(全4ページ中)

この記事の写真を見る

関連記事

あわせて読みたい


最新ニュース

  • [ADVERTISEMENT]

    Hulu | Disney+ セットプラン
  • [ADVERTISEMENT]

トップへ戻る