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『魔女の宅急便』原作者・角野栄子が伝えたい、“ひとりひとりが自分の言葉を持つことの大切さ”

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角野栄子
角野栄子 クランクイン! 写真:松林満美

 『魔女の宅急便』の作者として知られる、児童文学作家・角野栄子の日常に4年にわたって密着したNHK Eテレのドキュメンタリーを新たに撮影し再編集した『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』が、1月26日より公開される。鎌倉の自宅では自分で選んだ「いちご色」の壁や本棚に囲まれ、カラフルなファッションと個性的なメガネを身に着ける、89歳の「自由人」。一方、5歳で母親を亡くし、戦争を経験。結婚後24歳でブラジルに渡り、35歳で作家デビューするなど、波乱万丈な人生を歩んで来た人でもある。そんなカラフルな魔女に、自由に生きる秘訣を聞いた。

【写真】襟元の“メガネモチーフ”アクセサリーは自らアレンジ! 89歳・角野栄子さんのファッションがかわいすぎ!

◆オシャレの秘訣は「あまり人を気にしない」「自分の着たいものを着る」

――映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』はご覧になりましたか。

角野:はい。カメラマンさんにも、あんまりリアルに撮らないでと言ったんですよ(笑)。でも、全部丸見えでね、うちの中がどうなっているか全部わかっちゃったわね(笑)。もともとEテレの番組(2020年)への出演を受けることにしたのは、文学館(魔法の文学館)ができる計画があったから。その宣伝になるかなとか、私の本の読者が増えるのは良いことだなと思って、お受けしたんです。でも、やってみたら「意外とやばい」と(笑)。やっぱりテレビって大変ですね。だって、写真はパチパチで終わりでしょ。でも、テレビや映画はじっと時間をかけて撮るんです。私はこれでもういいと思っても、実際に撮った素材が全て同じように使われるわけじゃないから、撮影は時間がかかりました。

――『魔女の宅急便』シリーズや、『スパゲッティがたべたいよう』『ハンバーグつくろうよ』や、「小さなおばけのアッチ・コッチ・ソッチ」シリーズなどを親子で読んだという方も多いかと思います。

角野:私が作家になったのが1970年(『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』)で、あれから50年以上、本も250冊以上出ているんですよね。いまだにお子さんも読んでくださるから、親子で読んでいる方もいれば、こうして取材に来られる方が子どもの頃に読んでいたと言ってくださることもたくさんあります。私の本にはお料理がたくさん出てくるけど、実際に作れないものは書かなかった。お母さんと一緒に作ってみたいとお子さんが言ったとき、「これはお話の中のものだから、実際にはないのよ」と言わなきゃいけないものは、書きたくなかったから。大まかだけど、分量ぐらいは書いて、実際に作れるようにしました。読者の方の中には、海外でシェフになられた方が、日本でレストランを出されているんですけど、「子どもの時、お母さんと一緒に角野さんの本を読んでハンバーグを作って食べたのがすごく美味しくて、それが原点だった」とおっしゃってました。


――映画でまず目を奪われるのが、物語から飛び出してきたような角野さんのカラフルなファッションです。オシャレの秘訣はどんなことでしょうか。

角野:あんまり人を気にしないということはあると思います。「こんな洋服を着て、隣の人に会ったら嫌だわ」みたいなこと、あるじゃないですか。でも、私はそういう風に思わないで、自分がやりたいと思ったらやってみたらどうですかと言っています。私はいろんな場所に呼ばれる中で、いろいろ考えて服を着ていましたが。そうすると、いったん出かけたのに「おかしいわ、これ」と思って戻ってきて、また着替えたりっていうようなこともあるわけ。もう面倒くさくなって、80歳ぐらいになったときから娘(アートディレクター・くぼしまりお)に全部コーディネートを頼むようになりました。

――赤がすごくお似合いですが、それもお嬢さんのお勧めですか。

角野:以前から赤は好きで着ていたんですけど、魔女シリーズを書くようになってから、黒ばかり着ていた時期もあったんです。それで、赤い洋服を着ていったとき、絵描きさんから「よくお似合いですね」と言われて、娘の勧めもあったのかもしれないけど、その頃から赤い服を着るようになりました。

どうしても黒い髪の毛のほうが身に着ける色が制限されるような気がします。その点、髪が白くなると、赤を着てもピンク着ても良いんですよ。そういう年齢になったの。だから、もう変なおばさんだと思われても良いから、自分の着たいものを着るようになりました。もちろん仕事をしていらっしゃる方には、TPOもあると思うけど、私にはそれがあまりないので。

――年齢を重ねて、楽しみが広がったわけですね。

角野:皆さんも、洋服の色と合わせて靴下から始めたら良いんじゃないですか。私も娘に言われて靴下を履くようになったんです。夏は冷房があるから、靴下を履くとあったかいし、冬は足首があったかいと寒さがふせげるしとっても便利ですよ。今はいろんな色の靴下を売っているし、失敗してもあまり金額的にも痛くないし、足元だと試しやすいんですね。私も靴下を履くようになってから、毎日がちょっと楽しいです。だから、面白い靴下を見つけると買ってしまうんですよ。

映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』場面写真 (C)KADOKAWA
――自由な生き方の一方で、毎日起きる時間や仕事を始める時間など、かなりきっちりされているのが意外でした。

角野:自分が弱いから、一度崩れたら、どんどん崩れちゃう。だから、時間をしっかり決めているの。私は仕事が好きだけど、ズルズルすれば、いくらでもズルズルできる仕事ですよね。だって、出社時間もないし、退社時間もないわけだから。ズルズルやっていたら、夜中までやらなくちゃならなくなっちゃう。それはやめたいから、朝10時半ぐらいから仕事を始めて夏は午後5時ごろまで、今は日が短いから4時ぐらいまで。それくらいで終わらないと、散歩に行けなくなっちゃうのよ。散歩と言っても、海がすごく好きだから、海に行くこともあれば、お買い物もあるし、必ずコーヒーを外で飲むというのも日課です。

夜は本を読んだり、テレビを視たり、絵を描いたり、そんな時間も大切です。私はテレビを視ながら絵をよく描くんですよ。テレビに出てきた人を描くこともあるし。私が描くのは、変なものなのよ。私のスキルではまともに人間なんて描けないから、ちょっとおかしな人を描いてみたりして、それを見て自分で面白いなと思っています。

――絵を描くことと、文章とは、また別の時間なんですね。

角野:絵は描きたくなったら描くだけだから。義務じゃないのね、私にとっては。文を書くのは好きで書いているけど、いささか義務もあるんです。だけど、絵は私にとってもっと自由なものです。

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◆私が書いたんじゃなくて、主人公が要求してくる

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